テキサス州とマレーシア南部に新工場を構え、事業基盤を拡充
こうした分散した市場で事業基盤を広げるため、チェンブロは2025年8月、最大20億台湾ドル(約100億円)を投じてテキサス州に工場を建設する計画を打ち出した。その2カ月後には、東南アジアのデータセンター集積地であるマレーシア南部ジョホール州で、新工場用地として6ヘクタールの土地を4900万リンギット(約19億6000万円。1リンギット=40円換算)で取得した。これら新工場は、台湾に2拠点、中国本土に2拠点ある既存の生産施設に加わることになる。
「当社はこれまで東南アジアを主要市場として捉えることはなかった。だが、この地域では携帯電話の普及が進み、若年層の人口も厚いため、顧客企業がデータセンター建設を急速に進めている。そうした動きに対応するには、当社も現地に展開する必要がある」とチェンは語った。
こうしたチェンブロの事業拡大は、台湾のテック企業の間で広がる流れにも合致している。政府系シンクタンク兼コンサルティング機関であるMICの台北拠点の産業アナリスト、イーリン・チェンによれば、地元企業の多くは、「台湾では研究開発と高度な製造体制を強化し、東南アジアでは中国への過度な依存を軽減する『チャイナ・プラス1』の生産拠点を整備し、米国では主に現地顧客向けの事業体制を整えている」という。
チェンブロの社長兼CEOを務めるコロナ・チェン(65。マギー・チェンとは親族関係にない)によると、テキサス州で計画する工場は、米国の関税措置への対応として進めるものではないという。コロナは、2026年2月に米連邦最高裁がトランプ大統領の関税措置に不利な判決を下す前に行われたインタビューで、「関税は、当社にほとんど影響を与えない」と語った。
ワシントンD.C.のシンクタンク、ハドソン研究所のシニアフェロー、ライリー・ウォーターズは、その判決後のメール取材に対し、米政権は2025年、サーバーとその部品の大半を関税の対象外としており、この扱いは今後も続く可能性が高いと述べた。ウォーターズは「売上高の半分を米国市場に依存するチェンブロのような企業にとっては朗報だ」と付け加えた。
AIサーバー向けシャーシへの転換に向け、研究開発投資を強める
「汎用サーバー向けシャーシよりはるかに高価なAIサーバー向けシャーシへの転換は、簡単ではなかった」と、マギー・チェンは認める。AIサーバー向けシャーシには、1980年代のコンピューターが扱っていたメガバイト単位ではなく、テラバイト単位のデータを処理できるチップが搭載される。そうした製品では、顧客ごとの仕様に極めて正確に対応する必要があり、部品には軽さに加え、放熱性や耐荷重性も求められるという。
しかも、顧客の要求は絶えず変化する。それでもチェンは、「顧客と議論して負ければ面目を失うし、勝っても受注を失う。だから当社は解決策を見つけることに集中している」と語る。
社長兼CEOのコロナ・チェンによると、研究開発費の増額分は、熱管理やシャーシ構造といった分野に充てられる。どちらも、汎用サーバーより発熱が大きく、重量も重いAIサーバーでは重要な技術だ。チェンブロは2024年、空冷と液冷の両方に対応したフレームを発表したが、どの程度の熱を処理できるかについては明らかにしていない。
AWSへの強い依存と、AIインフラへの過剰投資がリスクとの指摘
足元の需要は堅調だが、チェンブロの業績を揺るがしかねないリスクもある。みずほ証券のガイは2025年11月のレポートで、同社のAWSへの強い依存を問題視した。米国売上高の大半をAWSが占めているためだ。ガイは、「AWSがサーバープロジェクト向けに、多くの筐体サプライヤーを認定すれば、価格競争が激しくなる可能性がある」と指摘する。
より長期的に見れば、最大のリスクは皮肉にも、今チェンブロの成長を支えている要因そのものにある。「AIサーバー業界全体にとって最大の下振れリスクは、AIインフラや設備への過剰投資だ」とガイは語る。「AI関連の設備投資が減速すれば、チェンブロにとって大きなリスクになる」と彼は警鐘を鳴らす。
これに対し、コロナ・チェンはAIバブルという見方を否定する。「AIを支える技術は入れ替わるかもしれない。だが、AIそのものが消えることはない。より新しい技術に置き換わっていくことはあっても、AIという領域自体は残り続ける」と彼女は語った。


