AIで何が起きているかを見極めるうえで、最も有力な手がかりの1つは、人々の意見であることが少なくない。こうした強力な技術を、企業活動や市民生活、さらには社会生活に取り入れることについて、人々は何を考えているのか。
この分野では、かなり多くの研究が進んでいる。最近の重要な動きの1つが、スタンフォード大学HAIの2026年版AIレポートの公表である。このレポートは、AIに対する意見をめぐって「深まる意見の溝」(great divergence)が発生していると指摘している。
今後のAIの行方を考えるうえで、注目すべき点は2つある。1つは、AI分野で実務経験を持つ「専門家」やオピニオンリーダーと、テクノロジーをいわば外側から眺めてきただけの一般市民との間にある認識の差だ。
雇用、雇用、雇用
ここでの大きな論点の1つは、AIについて調査を受けた人の多くが、AIは雇用の純減につながると予想している一方で、そう考える専門家はそれよりかなり少ないという、スタンフォードの調査結果だ。
モーニング・オーバービューに寄稿したドリアン・マドックスは、調査の手法を詳しく解説しながらこの結果を報じている。
「Pew Research Centerの調査は、2つの異なる集団を対象に実施された。全国を代表する一般市民の標本は、PewのAmerican Trends Panelによるものだ」とマドックスは記している。調査対象は、米国の成人1万1494人と、著者や登壇者からなる専門家標本2778人である。
「一般市民では、今後20年間でAIによって仕事が減ると予想した人が64%に上った。これに対し、AIの専門家で同じ見方を示したのは22%にとどまった。両者の差は42ポイントで、レポート編集者はこれを今年の最も重要な発見の1つと位置づけた」。
420ページにおよぶ本調査には、さらに多くの分析が含まれているが、多くの部分は直感的にも理解できるだろう。専門家はAIを戦略的かつきめ細かく活用する方法について、より具体的な見通しを持っている。また、職業上の立場やその他の形でAIに関与しているため、確証バイアス(自分に都合のよい情報を重視する心理的傾向)のかかり方も一般の人とは異なる。AIに利害関係を持たない人のほうが「AI反対」の立場をとりやすいのは当然であり、これは人間の基本的な心理といえる。AIは私たちの自己認識を不安にさせるほど揺さぶる可能性があり、それだけで多くの人が本能的に目を背けるには十分な理由となるのだ。



