一方、地上目標に関しては、フライングソードは人員に対しては有効でも、戦車や火砲のような装備に対しては役に立たないかもしれない。もっとも、後者は爆弾を搭載したFPVドローンで容易に破壊できる。一方、フライングソードには重要な利点が2つある。
ひとつは「巻き添え被害(コラテラルダメージ)」を抑えられる点だ。参考例を挙げれば、米国のAGM-114ヘルファイア空対地ミサイルには「R9X」という派生型があり、これは爆薬の代わりに展開式の刃を6枚備えている。「ニンジャミサイル」や、有名な包丁ブランドにちなんで「ギンスミサイル」とも呼ばれているR9Xは、大物のテロ容疑者らを狙ったピンポイント殺害に使用されている。ヘルファイアは重量が45kgかそこら、価格はおよそ10万ドル(約1590万円)とされるが、フライングソードであれば同等の殺傷力を携行可で低コストなパッケージで提供できるだろう。
#Syria: fragments of the missiles used today by US to kill a former Horas Al-Din member near Killi (N. #Idlib).
— Qalaat Al Mudiq (@QalaatAlMudiq) February 23, 2025
Those Hellfire missiles (R9X) use blades instead of explosives.
Impact point in the vehicle also pictured. pic.twitter.com/i1N0BExedE
さらに重要なのは、この種の技術は、軍用弾薬を保有せず、信頼性の高い即席爆弾も製造できない集団にとっても魅力的である点だ。フライングソードは実質的には「刃を取り付けた高速レーシングドローン」であり、FPVドローン愛好家であれば誰でも模倣できる。それでいて、こうしたドローンは壁やフェンスなどの防護障壁に妨げられず、数kmの範囲内にある目標を攻撃可能な精密兵器になるのだ。
米国の安全保障コンサルティング会社C/Oフューチャーズのマネージングパートナーで、市販ドローンの犯罪への悪用について多くの著作があるロバート・バンカーは、FPVドローンの高速化にともない、フライングソードのような設計は魅力的なものになっていると説明する。
「犯罪組織にしてもほかの組織にしても、運動エネルギーだけを用いるドローンで相当な被害を与えることができます」とバンカーは筆者の取材に述べた。「質量と速度が増せば、それだけ被害も大きくなります」
このタイプのドローンは人に対してだけでなく、民間航空機のような脆弱な目標に対しても使われかねない。
「ドローンは鳥よりも質量と速度がありますから、コックピットにより大きな損傷を与えたり、翼を突き破ったりすることになります」(バンカー)
こうしたドローンは標準的なFPVに比べて、阻止するのも難しくなる。飛来を察知してから対処するまでの時間的猶予を迎撃側にほとんど与えないからだ。8km離れた地点から発射された運動エネルギー式ドローンは1分ほどで目標に到達し、しかも非常に低い高度を飛んでくる可能性がある。着弾前にドローンを探知し、位置を特定し、識別し、迎撃する機会は乏しいだろう。
シャドーブレイク社は追加の情報提供の問い合わせに応じず、フライングソードがいつ入手可能になるのかについてもコメントしていない。ただ、デモンストレーションからは、開発がすでにかなり進んだ段階にあることがうかがわれる。
運動エネルギー式攻撃ドローンが普及するかどうかは未知数だ。それでも、戦場の内外を問わず、こうしたドローンが新たなタイプの脅威をもたらすのは間違いない。


