現在の混乱は「史上最大の石油危機」と言えるのか、そして国際エネルギー情勢の新たな時代の幕開けとなるのか?
最初の疑問に対する答えは「いいえ」、少なくとも「まだ」だ。1973~74年にかけて発生した最初の石油危機を上回る事態となるには、状況が大幅に悪化する必要がある。当時、石油輸出国機構(OPEC)の加盟国は石油輸出を最大で25%削減した。それに伴い、原油価格は300%以上急騰した。現在の価格に換算すると、米国によるイラン攻撃前の67ドル前後から200ドル超へと跳ね上がったことになる。
その歴史的な瞬間、世界は無防備で、まったく備えがなかった。これほど大規模な出来事はかつて一度も起きたことがなかった。石油は産業や発電から家庭用暖房に至るまで、経済のあらゆる分野に浸透していた。米国は主要な石油輸入国で、欧州もそれに次ぐ規模だった。1973年当時、海上石油貿易の85%以上をOPEC加盟国が生産していた。現在では、その割合は半分に減っている。
とはいえ、イランによるホルムズ海峡の軍事利用も、間違いなく歴史的な出来事だ。半世紀にわたる地政学的・経済的不安のシナリオが現実のものとなった。これが世界のエネルギーの新時代を切り開くことになるかどうかは分からない。
これは湾岸諸国がエネルギー以外の分野、例えば観光、金融、人工知能(AI)データセンターなどへの経済多角化を目指す取り組みに影響を与える可能性が高い。戦闘で荒廃した湾岸地域から逃れた数千人もの外国人駐在員や労働者のうち、どれほどの人数が同地域に戻るのだろうか?
今回の危機は、現代社会では石油がいまだに中心的な役割を果たしていることを浮き彫りにし、石油やガスが「時代遅れになりつつある」という主張が誤りであることを証明した。その意味で、現在の危機は現実主義への呼びかけとなっている。他方で、そうすることによって、変化の必要性を強く訴えているとも言える。具体的にどのような変化になるのかは、各国が独自に決定することとなるだろう。


