その他

2026.04.22 07:30

イラン情勢の混乱によるエネルギー供給の危機、世界に与える影響

Constantine Johnny/Getty Images

米国は原油価格の高騰から利益を得られるのか、そして中東諸国の石油輸出を代替できるのか?

この場合、どちらの質問に対する答えも「ある程度は」となる。

advertisement

その恩恵は石油産業全体に及ぶことになる。ここにはエネルギー企業だけでなく、これらの企業にサービスを提供する企業、つまり掘削装置をリースする企業、地震探査や坑井検層データを提供する企業、水圧破砕や坑井の保守を行う企業などが含まれる。こうした企業は通常、原油価格が上がると料金を引き上げる。しかし、新たな油井の掘削がほとんど、あるいは全く行われなければ費用を削減できる可能性がある。

まさにこれこそが、現在の米国産業界の戦略だ。高値がいつまで続くか不透明な状況下では、企業は新たな掘削計画を開始していない。業界は2011~14年にかけての教訓を生かし、自制しているのだ。当時、新規の掘削や生産が過熱し、市場が供給過剰に陥った結果、原油価格は35ドルを下回る水準まで暴落した。

一方、天然ガスについては事情が異なり、米国の輸出業者にとって少なからぬ利益をもたらすだろう。他の地域では価格が急騰しているにもかかわらず、米国内では価格が低水準で安定している。これは米国が必要量以上の天然ガスを生産しており、世界最大のLNG輸出国となっているためだ。向こう数週間から数カ月の間に、天然ガスの輸出は大幅な増加が見込まれており、米エネルギー省はLNGの主要な輸出拠点であるルイジアナ州のプラクミンズに対し、短期的に取扱量を増加させることを承認した。

advertisement

したがって、米国のガス輸出業者は、ホルムズ海峡の危機から大きな利益を得るのに有利な立場にある。図らずも、これらの企業は2023年以降、500億ドル(約8兆円)を超える投資を伴う大規模な拡張計画を進めている。アジアや欧州での需要増に対応するため、今後4~5年間で輸出能力を倍増させることを目指しているのだ。

短期的に中東産LNGの輸出を代替することに関しては、米国の国内生産では到底できない。だが、中期的には、つまり今後3~5年の間にはこれが実現するか、あるいは既に進行している可能性がある。日本と韓国はともに、ペルシャ湾岸諸国への依存度を低減させるための新たなLNG供給契約を結んでいる。世界最大のLNG輸入国である中国については、ロシアやイランとの戦略的提携関係や、国内のガス生産量の増加を考慮すると、現時点ではそのような展開は考えにくい。

向こう数カ月のうちに、米企業が原油生産量を日量100万バレルでも増産する見込みは薄いだろう。これは必要とされる量のほんの一部に過ぎない。LNGに関しては、カタールからの供給停止により日量約2億8000万立方メートルの供給不足が生じており、米国が補えるのはそのわずか5分の1程度にとどまる見通しだ。

米国のドナルド・トランプ大統領は、同国は世界最大のエネルギー生産国であり、現在の危機を勝ち抜くと主張している。しかし残念ながら、これは米国全体には当てはまるわけではない。実際、同国も日量600万~700万バレルという規模の石油を輸入しているからだ。

むしろ、最大の勝者はロシアだ。同国は現在の石油供給の逼迫(ひっぱく)に伴い、石油輸出に対する制裁を一時的に緩和されている。ロシアは現在、石油の輸出量を増やしており、収入は1日当たり約1億5000万ドル(約240億円)増加していると推定されている。

次ページ > IEAによる石油備蓄の協調放出はどのような効果をもたらすのか?

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事