経営・戦略

2026.04.26 15:00

富裕層に特化の「プレミアム質屋」、ラグジュアリー資産担保融資の実態

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腕時計、ハンドバッグ、ジュエリー、美術品。米国では富裕層が所有する高級品を担保に、最短1日で現金を融通する金融サービスが利用を広げている。米国で「質屋(pawn shop)」といえば、伝統的には低所得層が街角で日用品を質入れする場というイメージが強かった。だが、エルメスのバーキンが二次流通市場で数十万ドル(数千万円)単位の値をつけ、希少なロレックスやパテック フィリップが投資対象として語られる時代に入り、富裕層を専門に扱う「プレミアム質屋」が新たな金融プレーヤーとして登場している。

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業界の中核にあるのが、デンバーに本社を置く融資会社Luxury Asset Capitalと、そのオンライン融資プラットフォーム「Borro」だ。2016年に創業し、初年度で黒字化。これまでに累計10億ドル(約1580億円)超を融資し、2025年の売上高は推定6500万ドル(約103億円。1ドル=158円換算)。マンハッタンやビバリーヒルズの拠点には、希少素材のミニ・ケリーやダイヤモンド付きバーキン、8カラットのダイヤモンドリングが担保として保管されている。

借り手はヘッジファンドの運用担当者、起業家、コレクターと多様だ。マージンコール(証拠金の追加要請)への対応で宝石を差し入れる運用者もいれば、ロレックスの順番待ちリストに並ぶ間に手持ちの時計を担保にして新作の購入資金を確保する顧客もいる。融資はノンリコース型で、返済不能時には担保の没収・売却で完結し、借り手の他資産には波及しない。担保評価額に対する融資比率は40〜65%、月利は数%台前半。追加費用込みで月5%、年率換算で60%近くに達するケースもある。

マンハッタンに並ぶ高級品担保で、ラグジュアリー資産担保融資の実像が浮かぶ

融資会社Luxury Asset Capitalのマンハッタンのオフィス内にある温度管理された保管室には、エルメスのハンドバッグがずらりと並んでいる。1点あたり約7万5000ドル(約1200万円)で取引される希少な革素材のミニ・ケリーや、ダイヤモンドをあしらったバーキンバッグに加え、数十万ドル(数千万円)超の価値を持つ限定品が棚に置かれている。

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その近くには、最高5万ドル(約790万円)ほどの値がつく『ライ麦畑でつかまえて』の初版本が置かれ、20万ドル(約3200万円)超の奈良美智のドローイングを含む現代アート作品も並んでいる。廊下の先の金庫には、ロレックスの腕時計やダイヤモンド、金のジュエリーが何十点も保管され、すべて丁寧にタグ付けされ封印されている。

だが、どれも売り物ではない。

これらはすべて、富裕層の借り手が、素早く現金を手にするために差し入れた担保なのだ。デンバーに本社を置くLuxury Asset Capitalは、街の質屋のような仕組みと、スイスの銀行のような秘匿性を組み合わせた事業を展開している。借り手は腕時計やジュエリー、ハンドバッグ、美術品を担保に入れ、その見返りとして短期のノンリコースローン(返済が担保の範囲内に限定される借り入れ)を受ける。融資は多くの場合、1日以内に実行される。

ある大手ヘッジファンドの運用担当者は、多額の証拠金の追加を求められた後、妻が所有する60万ドル(約9500万円)超の価値がある8カラットのダイヤモンドリングを質入れした。その後、融資は返済され、指輪は返却された。別の顧客は、エミー賞のトロフィーを担保として持ち込んだこともある。

ラグジュアリー資産担保融資(luxury asset lending)は、資産管理と差し迫った資金需要が交わる領域にある。手元資金は乏しいが資産は豊富という借り手は、高級品を売却するのではなく、担保として差し入れることで素早く現金を確保する。従来の銀行融資のように書類手続きや個人保証を経由する道もあるが、それを避けるための選択でもある。

次ページ > 創業者兼CEOが語る、顧客が高級品を信用枠のように使う理由

翻訳=上田裕資

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