要するに、ヒューマノイドロボットは実用の域に近づいている。つい先日には、世界で初めて、工業規模の電子機器生産ラインにヒューマノイドロボットが導入された。能力が高まるにつれて、ヒューマノイドロボットに開かれる仕事や役割は増えていくことになる。
とはいえ、課題はまだ山積している。
ヒューマノイドロボットは、ボルトにねじを通す、壊れやすい物を扱う、人間の手を前提に設計された工具を操作するといった、器用さを要する作業能力をさらに大幅に向上させる必要がある。精密な運動制御の問題は、商用レベルではほぼ未解決のままだ。ただし、最近では優れたロボットハンドの開発事例が複数報告されている。
また、ハーフマラソンで多くのヒューマノイドロボットが見せた走行能力は印象的だったが、ロボットには、より優れたフィジカルAIと、周囲の環境の意味を理解する力がなお必要である。
必要なのは、空間の中をどう移動するかだけではない。新しい状況で何をすべきかを理解することだ。この点は、家庭環境ではヒューマノイドが作業の88%をこなせなかったという最近の報告からも明らかである。
重要なのは汎化能力だ。特定のコースを走るよう訓練されたロボットが、新しい工場のレイアウトに初日から対応できるとは限らない。シミュレーションで得た学習を現実世界に移すことは、フィジカルAI研究の大きな課題であり続けている。
そして、もちろんコストも課題だ。
いま中国では、比較的安価なヒューマノイドがいくつも登場している。その中には、5000ドル(約79万4000円)未満のUnitree R1もある。しかし率直に言えば、それで工場の現場が務まるわけではない。ヒューマノイドの価格が産業用協働ロボットと同程度、つまりおそらく5万~8万ドル(約794万円〜1270万円)の水準に達するまでは、投資対効果の面で導入を正当化しにくい。
ハーフマラソン完走が示したのは、一定の持久力と速度、自律走行能力だ。ヒューマノイドロボットが工場で人間の代わりになれることまでは示していない。
それでも、今回の取り組みはその方向への一歩である。興味深くはあっても、実際にどれだけ役立つのかはほとんど見えてこない「踊るロボット」を見せるより、はるかに意味がある。
おそらく、ヒューマノイドロボットが肉体労働の現場に広く普及するまでには、あと3~5年かかるだろう。もちろん規制整備、税制対応、労働者の再訓練、そしてAIがホワイトカラーの仕事を侵食しロボットがブルーカラーの仕事を担うようになる中で雇用と賃金をどうするかを考えるという点から見れば、3~5年はほんの一瞬である。
つまり、私たち「ヒューマン1.0」は、これらの問いに対する答えを今すぐ考え始めなければならない。労働市場の大変動は現実であり、確実にやってくる。


