AI

2026.04.26 09:30

AIの奴隷にならないリーダーの条件:宮城聰×冨山和彦

宮城 聰(演出家、SPAC芸術総監督)・冨山和彦(日本共創プラットフォーム代表取締役会長)

宮城 聰(演出家、SPAC芸術総監督)・冨山和彦(日本共創プラットフォーム代表取締役会長)

現在発売中のForbes JAPAN 4月24日発売号は「THE LEADERSHIP AI時代のリーダーシップ」特集。2022年のChatGPT登場以降、日本でも「AX」が経営課題の中心に躍り出た。自ら思考し、タスクを完遂する「AIエージェント」や、人型ロボットや高度な自動化技術といったフィジカルAIたちが、さまざまな組織に新たなアクターとして加わっている。こうした時代の転換点において、リーダーはAIを効率化のための道具にとどめず、新たな事業創出のためのパートナーととらえ、戦略的に使いこなすことが求められている。AIと人間が仲間として共に働く未来において、組織におけるリーダーシップはどう変化するのか。本特集では、多様なアプローチで未踏の時代を切り拓く新しいリーダーたちの言葉から、「AI時代のリーダー像」を探る。

本パートでは、人はリーダーに何を求めるのか─谷本が識者たちの声の中から探る。まずは、ビジネス脳と演劇脳が交わる先輩・後輩の異色のふたりの対談から紐解いていく。


日本共創プラットフォーム(JPiX)代表取締役会長の冨山和彦、世界から高く評価される演出家の宮城聰。中高の先輩・後輩であるふたり。ビジネス脳と演劇脳が交差したとき、従来のビジネスの対極にあるAI時代のリーダー像が見えてきた。

──現在、おふたりはリーダーとしてどのようにAIと向き合っているのでしょうか。

冨山和彦(以下、冨山経営者の仕事の大半は意思決定ですが、その前提となる情報収集や分析はAIがものすごいスピードでやってくれるため非常に楽になりました。しかし、リーダーが最後に決めるべきことに論理必然的な正解はありません。未来に向かって不完全情報のなかで決めるわけですから、最後は「ガッツフィーリング(直感)」で決めるしかない。AIが論理的な選択肢を整理してくれるからこそ、人間は本来の付加価値を生む意思決定にエネルギーを使えるようになっています。

宮城聰(以下、宮城演劇の現場で感じるのは「ほかの人より早く本を読んだから知識がある」と威張るリーダーはいらなくなるということです。優れた演劇を作るとき、演出家の頭のなかに最初から完成予想図があるわけではなく、方向だけを示してみんなでつくっていきます。その際、効率の良いやり方を取る人は決して選ばないような、わざわざ「愚かなほう」を選ぶんです。誰も想像できない馬鹿げたエネルギーの使い方をするからこそ新しいものが生まれる。AIを使えば「すでにやられている効率的なルート」がすぐわかるので、それを排除して「もっと愚鈍じゃなくちゃいけないんだ」と気づくためにとても便利です。

──宮城監督は最近、実際の創作の現場でもAIを使われたそうですが。

宮城: 今年、ヴェネチア・ビエンナーレの演劇部門で「オセロー」を上演します。現地の主催者から抽象的なビジュアルイメージが欲しいと求められたので、夏目漱石の「白菊に しばしためらう 鋏(はさみ)かな」という俳句を使おうと考えました。真っ黒な花切り鋏で真っ白な菊を切ろうとするときのためらいが、まさにオセローの世界そのものです。筆で書いたこの句に抽象画を添えようと思い、生成AIで作ってみました。ビジュアルイメージはなんとなくできるのですが、筆文字が、全然ダメ。なぜかと考えたら、AIの文字にはエネルギーの「流れ」がないんです。寸断されている。肉体の本質は「連続性」なのに、AIには肉体がないから、パトス(情念)やエネルギーの流れを定着させることができない。だから最終的には、肉体を伴う書の部分だけは自分で書きました 。AIにはパトスがないということがよくわかった出来事です。

次ページ > 「AIの奴隷」になるな

文=西村真里子 イラストレーション=ジョエル・キンメル

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事