人手不足といえば、若手の確保が真っ先に課題として挙がる。特に日本では「新卒が採れない」という声が絶えない。だが、世界の採用市場に目を向けると、企業が最も手に入れられずにいるのは、若手ではなく経験豊富な人材のほうだ。
総合人材サービスのランスタッドが世界24カ国を対象に実施した「高需要スキル調査2025」が、その実態を映し出している。2200万件超の求人情報と1億6600万件の職務経歴書、3億8000万件以上のメタデータを分析したレポートだ。
調査対象に日本は含まれていないものの、経験や資質といった人間固有のスキルがグローバルにどう評価されているかを知るうえで、示唆に富む内容となっている。
経験者の争奪が止まらない理由
調査によれば、職種やスキルを問わず、世界的に「経験豊富な人材」の獲得が困難を極めている。その一方で若手へのニーズは低下傾向にあり、このまま進めば将来の中堅・シニア層が不足するリスクも指摘されている。
日本では新卒一括採用が社会システムとして機能しており、若手のポテンシャル採用は一定規模で維持されてきた。この仕組みは日本独自の強みといえるだろう。ただし、AI・オートメーション分野のようにスキル需要が急速に変化する領域では、入社後の育成だけで追いつけるとは限らない。グローバルな経験者争奪の波が日本の労働市場に波及する可能性は、決して小さくないはずだ。
AI人材より採れない人間のスキル
スキル別の需要変化で最も目を引くのは、AI・オートメーション(人工知能・自動化)の前年比39.6%増という伸びだ。クラウドコンピューティングの1.8%増、監査・コンプライアンスの1.5%増と比べると、その勢いは桁違いといっていい。

ところが、求人の埋まりにくさという視点で見ると、景色は一変する。レジリエンス(逆境力)を求める職種の欠員率は12.0%に達し、AI・オートメーションスキルの7.8%を大きく上回った。
こうしたスキルは短期間の研修で身につくものではなく、多くの場合、現場での経験を通じて時間をかけて磨かれる。経験豊富な人材の争奪が激しさを増す背景には、技術的な専門性だけでなく、この「人間のスキル」への需要が重なっているという構造がある。

AIスキルへの需要急伸が注目を集めるなかで、最も埋まらない空席が人間にしか担えない領域に残っている。キャリアの中で何を積み上げ、どんな経験を重ねるか。その選択の持つ意味は、今後さらに重くなっていくのではないだろうか。
【調査概要】
調査対象:世界24カ国、2,200万件超の求人情報および1億6,600万件の職務経歴書を含むメタデータを分析
調査期間:年間を通じたデータ収集
出典:ランスタッド「高需要スキル調査2025」
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