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2026.04.21 15:00

ティム・クックはアップルを時価総額約632兆円の企業に押し上げた──次期CEOは何が問われているか

slvn_an - stock.adobe.com

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筆者は長年この業界に身を置き、アップルを黎明期から、いくつもの変化のサイクルを経た姿を見てきた。ティム・クックは、批判者たちが認めようとする以上の評価に値する人物だ。2011年にアップルを引き継いだとき、彼が受け継いだのは世界で最も称賛される企業であり、現代ビジネス史上最も困難な後継者の座だった。

スティーブ・ジョブズの後を継ぐということは、単なるCEOの交代ではなかった。業界を再定義し、史上最も強力で印象的なブランドの1つを築き上げた先見の明ある創業者の後を継ぐということだった。ほとんどの後継者はその座で失敗する。伝説を拙く模倣するか、変化を急ぎすぎるか、会社を特別たらしめていたものを徐々に薄めてしまうかのいずれかだ。クックはそのどれもしなかった。彼はもっと難しいことを成し遂げた。天才をプロフェッショナル化したのだ。

ティム・クックが、アップルを“収益化の傑作”に変えた

クック体制下のアップルは、公開市場が目にした中で最も優れた経営事例の1つとなった。同社の企業価値は、彼がCEOに就任した当時の約3500億ドル(約55.3兆円)から4兆ドル(約632兆円)以上にまで上昇した。これほどの富の創出は偶然ではない。長年にわたる規律・忍耐・判断力、そして絶え間ない実行力の賜物だ。クックはジョブズのようなビジョナリーではなかった。当時のアップルにはそれは必要なかった。必要だったのは、彼が体現したオペレーターとしての能力だった。

投資家はしばしば、リターンの真の源泉を誤解している。筆者が以前Forbesに寄稿した記事で論じたように、リーダーシップのスタイルはスプレッドシートが捉える以上に重要だ。ビジョナリーはまったく新しい価値の源泉を生み出す。オペレーターは、すでに生み出された価値の源泉を拡大し、守り、収益化する。市場には両方のタイプのリーダーが必要だが、通常は同時にではない。

クックは、ジョブズの後すぐにアップルが自らを再発明する必要はないと理解していた。必要だったのは、既存のものをスケールさせることだった。彼はiPhoneを真の意味でグローバル化し、サービス事業を継続的で効率的な収益源に変え、サプライチェーンを競争障壁へと磨き上げ、自社株買いを驚くべき精度で活用した。彼はアップルを、ほとんど誰も想像できなかったほど強靭で、収益性が高く、持続可能な企業にした。

多くの投資家はイノベーションと価値創造を混同している。筆者の見方では両者には重なり合う部分があるが、同じものではない。iPhoneは革命的なイノベーションだった。クック体制下のアップルは、収益化の傑作となった。

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