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2026.04.21 12:30

ティム・クックはいかにしてアップルをメディア界の巨大企業へと変貌させたのか

2025年9月9日、iPhone 17を手にするアップルのティム・クックCEO。カリフォルニア州クパチーノのアップル本社でアップルのスペシャルイベントが開催された(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

ティム・クックのもとでメディア大国へと変貌したアップル

とはいえ、アップルを主要なメディア勢力へと押し上げるために、クックが先頭に立って進めた取り組みは見過ごせない。

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Apple Music

まずはApple Musicだ。表向きには、同サービスはSpotifyの台頭に対するアップルの即座の回答だった。しかし実際には、はるかに戦略的な意味を持っていた。ハードウェアを購入した後も、ユーザーをアップルの世界にとどめる手段だったのだ。Apple Musicが2015年に始まったことも、アップルにとって大きな転換だった。かつて0.99ドルで単曲購入を普及させた企業が、膨大な楽曲ライブラリへのアクセスを売るようになったのである。

アップルはさらに、Spotifyよりも踏み込み、ゼイン・ロウのようなパーソナリティを起用してアーティストインタビューやライブラジオ番組を展開することで、Apple Musicに個性と文化を持ち込んだ。

Apple TV

そしてApple TVである。

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アップルは、作品数という物量で巨大なライバルであるネットフリックスを上回ろうとはしなかった。代わりに、HBOに近い路線を採った。すなわち、作品数はごく少なく、格の高さ(プレミアム感)に注力し、文化的に大きな勝負を仕掛けるやり方だ。サービスは2019年に開始され、数年も経たないうちに、ストリーミングの混戦を突き抜ける大きな成功をすでに手中に収めた。『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』や『セヴェランス』といった作品である。

Apple TVの新作には、エル・ファニングとミシェル・ファイファーという豪華キャストを擁するA24風の『マーゴのマネートラブル』が現在配信中であり、アニャ・テイラー=ジョイ主演の犯罪シリーズ『ラッキー』は今夏(7月)に配信予定だ。

映画部門では、Apple TVは2022年にヒューマンドラマ『コーダ あいのうた』でアカデミー賞作品賞を受賞し、ハリウッド最高の栄誉を手にした初のストリーミングサービスとなった。映画・テレビ業界における主要プレイヤーとしてのアップルの地位を確立した瞬間だった。

Apple News

ここで触れておきたいのが、もう1つのサービス、Apple Newsである。これはおそらく、このパズルの中で最も過小評価されているピースかもしれない。

もちろん、アップルはApple Newsアプリ内に掲載されるジャーナリズムそのものを制作しているわけではない。アップルが担っているのは、それを集約し配信することだ。出版社と読者の間に入り、ニュースの消費のされ方に大きな影響を及ぼす形で機能している。

人々の「聴く」「観る」「読む」日常

これらのサービスを合わせると、人々が「聴く」「観る」「読む」日常の中で、アップルは毎日存在感を持つことになる。さらに、Apple Oneを通じてそれらが束ねられると、アップルのエコシステムの内部で完結する強力なメディアパッケージとなる。

これは、クックがいまターナスに引き継ぐアップルの重要な一面である。単にデバイスを売る会社ではなく、そこを流れるコンテンツをますます形づくる会社でもあるということだ。

クック自身は退任の書簡で、今回の交代を正式に発表するにあたり、自身の在任期間を「一生に一度の機会」だったと表現し、次のように記した。「想像力をかき立て、人々の人生を言葉では表せないほど深く豊かにする会社のリーダーになれたこと。これほどの名誉と特権があっただろうか」。

forbes.com 原文

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