リーダーシップ

2026.04.21 01:47

プレッシャー下で成功するリーダーに不可欠な「感情知能」──AI時代の人材育成

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「AIは、より良いデータ、より迅速な診断、より明確な情報によって、私たちのチームを確実に支援できる」。スコット・エイブラム氏は、Enchanted Rockでトレーニング部門のディレクターを務める人物で、筆者にこう語った。「しかし、AIにはできないことがある。午前3時に出動し、現実の条件下でトラブルシューティングを行い、最も重要な局面で電力を復旧させることだ。その判断と説明責任には、依然として人間が必要である」

エイブラム氏が、AI時代を考える際にリーダーに出発点としてほしいのは、まさにこの点である。「AIは、私たちができることのスピードと複雑さを高める。より速く運用でき、より早くデータを得られる」と彼は説明した。

しかし同時に、こうした新たなスピードと複雑さは、自己認識、信頼構築、変化への対処といった、永続するリーダーシップの課題に取って代わるものではないと彼は指摘する。実際、40人以上の人材開発リーダーへのインタビューでは、ほぼ全員が、これらのスキルの必要性は縮小するどころか増していると述べた。「リーダーシップのトレーニングとは、変化が多く、状況が混乱し、カオスになる局面で、リーダーが実行できる準備を整えることだ」とエイブラム氏は言う。「私のトレーニングチームは、変化の局面や結果の重大性が高い条件の下で、適切な意思決定を行い、チームを効果的に率いるために必要なヒューマンスキルを、リーダーに身につけさせている」

Enchanted Rockは、病院、大規模製造施設、食料品流通業者、公益事業者、データセンターといった重要組織が、送電網の混乱があっても事業を停止せず稼働を続けられるよう支援している。プレッシャー下でも成果を出し、健全な意思決定ができるリーダーを育てるため、エイブラム氏は感情知能に大きく依拠している。感情知能(EQ、エモーショナル・クオシェント)を、他のあらゆるリーダーシップ・スキルの土台となる能力だと捉えている。

自己認識は感情知能への入口を開く

「自己認識は感情知能への踏み台だ。自分を理解できず、自分が何者で、何が自分を動かしているのかを本当の意味で特定できなければ、他者を理解することは決してできない」とエイブラム氏は言う。

Enchanted Rockで自己認識を高めるために、エイブラム氏とチームは、各リーダーのモチベーション、目的、意味を検証する。次に、それらの要素がリーダーとしてのアプローチにどう活かせるかを探っていく。

そこからエイブラム氏は、セルフ・レギュレーション、すなわち感情を管理する能力を鍛える。導入向けのリーダーシップ・ワークショップでは、ヴィクトール・フランクルの「刺激と反応の間に空間をつくる」という概念を扱う。「反応を選べるその空間で、人の成長の多くが起こる」と彼は述べた。

最後に、共感と関係構築に踏み込む。「自分をより深く理解し、感情を調整できるようになると、チームに関与し、信頼を築き、困難な状況をチームが乗り越えるのを助ける力が大幅に高まる」

集団浅慮を防ぐために信頼を築く

エイブラム氏は、感情知能を、あらゆる組織において最も危険な過ちの1つである集団浅慮(グループシンク)に対する安全装置とも見なしている。

彼が例として挙げるのは、スペースシャトル「チャレンジャー号」の事故である。彼の心に残っているのは、ミッションの技術的失敗だけではない。人間としての失敗、すなわち「反対意見を恐れすぎた」集団が、何かがおかしいと分かっていた人々でさえ発言をためらう状態に陥ったことだ。

「感情知能の高いリーダーは、特に利害が大きい局面では、フィードバックと反対の視点を求める」と彼は言う。

さらに重要なのは、集団浅慮を打破するうえで、感情知能の高いリーダーは時間をかけて信頼を築くという点だとエイブラム氏は指摘した。そうすることで、チームメンバーは安心して発言できるようになる。信頼を築くには、リーダーが人をより深いレベルで理解する必要がある。すなわち、その人の性格、価値観、モチベーションである。

信頼が築かれ、リーダーが集団内のあらゆる声から積極的にフィードバックを求めると、チームは発言し、反対意見を共有することにより安心感を持ち始める。

感情知能は教えられる

エイブラム氏は、感情知能が、生まれながらに備えた「選ばれた少数」のものだという考えを退ける。「リーダーはつくれる」と彼は言う。「感情知能は開発できる」

感情知能をトレーニングする彼のモデルは実践的である。重要な行動を定義する。良い状態がどういうものかを明確にする。練習する。強化する。振り返り、適用し、成長する機会を与える。

このアプローチにより、EQが曖昧で神秘的、あるいはエリート主義的なものになることを防げる。代わりに、EQは、名前を付けられ、教えられ、強化できるヒューマンスキルのセットとして扱われる。

EQはAI時代に向けたリーダーの備えを助ける

Enchanted Rockにおけるリーダー育成の取り組みの中で、エイブラム氏が繰り返し立ち返る言葉がある。陸軍の上級指導者の1人から受け継いだ一節だ。「自分が知らないことを自分は知らない。だからこそ、自分が何者かを知っておいたほうがいい」

この言葉は、Enchanted Rockで拡大するチームにとって中核となるリーダーシップ哲学として機能している。「明日の課題は、今日直面している課題と同じ姿をしているとは限らない」と彼は言う。「しかし、自分が何を大切にしているかを知っているリーダーは、状況が変わり、高いプレッシャーの局面が生じても、健全な意思決定ができる」

AI時代において、多くの企業は技術的な精通度でリーダーの準備状況を定義したくなるだろう。しかし、有効なリーダーシップの多くは、こうした普遍的な感情知能のスキルへと回帰する。自分を知ること、感情を調整すること、信頼を築くことだ。

エイブラム氏の言葉を借りればこうだ。「プレッシャーが強まるとき、人々はプラットフォームを見ているのではない。人を見ている。そして、それは決して変わらない」

ケビン・クルーズは、感情知能のトレーニング企業LEADxの創業者兼CEOである。ケビンはまた、New York Timesのベストセラー作家でもある。最新刊はEmotional Intelligence: 52 Strategies to Build Strong Relationships, Increase Resilience, and Achieve Your Goalsである。

forbes.com 原文

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