サイエンス

2026.04.26 17:00

なぜ、人間だけが恥ずかしさで「赤面」するのか? ダーウィンも魅了した謎を進化生物学者が解説

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人間だけが赤面するのはなぜか

これはおそらく、赤面に伴う特徴の中で最も気になる点だろう。霊長類の仲間も、私たち人間と同じように、しかめ面をして難色を示したり、笑顔を見せたり、率直に訴えかける顔つきをしたりと、さまざまな表情を見せる。しかし、赤面に相当する表情はない。社会的な状況に応じて無意識のうちに生じる赤面という表情を持つ動物は、ほかに存在しないのだ。

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赤面が人間にしか見られない理由を説明できそうな、重なり合った複数の要因がある。1つめは、人間が進化とともに顔面の毛を失ったことだ。人間は、顔が相対的に見てむき出しになったため、ほとんどの霊長類では見られない皮下血流が見て取れるようになった。その結果、それまでは生理学的な反応にすぎなかった現象が、自然選択によって、意味を持つシグナルとして利用されるようになったのかもしれない。

2つ目はもっと根本的な要因であり、赤面には「心の理論(theory of mind:他者には自分とは異なる意図や感情などがあることを理解し、相手の心の中を推測・予測する能力)」が必要である点だ。W・レイ・クロージャーが実施した広範にわたる研究で明らかになったように、人間はとりわけ、自分が評価されていることを自覚した時に赤面する。つまり、ほんの一瞬だけ他者の視点に立ち、他人の目を通して自分自身をとらえる能力が必要なのだ。

心理学者が「心の理論」と呼ぶこのメタ認知能力は、人間だけが獲得したものだ。この能力がなければ、恥ずかしさを覚えるような社会的自己は存在せず、従って赤面もしない。

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進化しても、赤面という現象が残ったのはなぜか

ダーウィンも、矛盾しているように思えるこの問題に悩んでいた。赤面することで、意に反して恥ずかしさが露呈してしまうなら、自然選択によって赤面が消えなかったのはなぜなのか。何しろ、戦略的に見れば、隠すことは、時に有益なのだ。

答えは、赤面が自分では制御できない働きであることに由来する。人類の祖先は、互いに依存し合う少人数の集団で暮らしていた。そこでは、個々の評判はまさに、生きるか死ぬかを左右する問題だった。違反行為を犯し、許しを得る必要がある場合は、必ず関係を修復しなければならなかった。そのため、後悔していることを、偽らずに示せる誠実な表現が非常に重要だった。

赤面する人は、傷ついた関係を修復できただけでない。集団側もまた、赤面を信頼に足る情報として利用し、相手を許して再び協調していくべきかどうかを決めることができた。

つまり、やりとりする双方にとって、自然選択は同時に有利に働いたということだ。その結果、進化的に安定した均衡が生まれた。つまり、赤面というシグナルは、そもそもごまかしの効かないものであり、抑制するためのコストは大きい。その瞬間はいかに屈辱的であろうとも、赤面は、人間の顔に備わった働きとして最も洗練されたものの一つと言っていいだろう。

ということで、次に自分の意に反して頬が赤くなった時は、地球上のほかのどの動物にもまねできないことをしていることを思い出そう。自分が、社会における自らの立場を気にかけていることを、不本意ながらも間違いなく証明しているのだ、と。進化はそうした働きを、維持する価値があると判断したのだ。

forbes.com 原文

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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