サイエンス

2026.04.26 17:00

なぜ、人間だけが恥ずかしさで「赤面」するのか? ダーウィンも魅了した謎を進化生物学者が解説

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こんな場面を想像してほしい。会議室のドアを間違えて開けてしまい、中に入って行く。そこにいた全員がこちらを振り向く。すると、状況をまだ完全にのみ込めず、「恥ずかしい」という考えすら頭に浮かんでいないのに、頬が真っ赤になる。赤面したせいで、しかも自分では制御できないために、思いかげず、会議室にいる人全員に胸の内が伝わってしまう。

赤面は、チャールズ・ダーウィンが関心を寄せて以降、多くの科学者を魅了してきた謎だ。進化はなぜ、私たちの弱さをあれほどまでにさらす特質を残したのだろうか。何としても隠れたい、というその瞬間に、体の中で最も目につきやすい顔に、意図せず血液が流れていく。こうした現象に、いったいどんな適応上の目的があるのだろうか。

その答えは、私たち人間がどのような社会的動物であるかを、繊細で明快、かつ徹底的に明らかにしている。

赤面の背景にある生物学

赤面は根本的に、血管が反応する現象だ。社会的な反応を引き起こす状況を察知すると、交感神経系は顔や首、胸の上部の血管にあるβ2アドレナリン受容体を活性化させる。闘争・逃走反応を制御しているのも、この交感神経系だ。

しかし、この反応には奇妙な点がある。このβ2アドレナリン受容体が活性化された場合、体の大部分では血管が収縮する。つまり、血管が細くなる。ところが、顔の血管では、それとはまったく逆の現象が起きる。血管が拡張し、血液が顔の皮膚の表面近くに溜まるのだ。その結果、顔が見るからに赤くなる。

こうした身体構造上の風変わりな特性は、偶然の産物ではない。顔にある血管系は、そうした反応をするよう特異的に組み込まれている。赤面は、刺激を受けて体の働きが盛んになったことに伴う不運な副作用などではなく、明確な生理学的な反応であり、専用の回路を持っていることを意味する。

赤面を病理生理学的に研究したピーター・ドラモンドの論文によると、赤面の仕組みには交感神経系が関与しており、自律神経が活性化されて起こる他の反応とは、明らかに区別できるという。

さらに興味深いのは、赤面は、意識的に制御しようとしてもできない反応であることだ。俳優なら、心情を表現するために、いくらでも笑顔をつくったり、涙を絞り出したり、声の調子を変えたりできる。しかし、自在に顔を赤らめられる人はいない。

さらに決定的なのは、赤面するのを意識的に抑えられる人も、誰ひとりいないことだ。赤面していると自覚すればするほど、顔の赤みは増していく。これは、進化的な意義にとって実に重要な点だ。

W・レイ・クロージャーが2006年に発表した画期的な推論「Blushing and the Social Emotions(赤面と社会的感情)」で述べているように、赤面は意図せぬ変化であり、望もうが望むまいが、その人の内心を露わにする。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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