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2026.04.24 16:30

OpenAIのアルトマンCEOも出資する米Formation Bio、AIで臨床試験の加速に挑む

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人工知能(AI)が新薬発見を加速させるとの期待が高まっている。だが、ニューヨークに拠点を置く2016年創業のFormation Bio(フォーメーション・バイオ)は、一般的な見方とは異なる戦略を掲げる。同社CEOのベン・リウ(36)と共同創業者のリンハオ・ジャン(34)は、新薬開発の真のボトルネックは創薬ではなく、臨床試験にあると確信しているからだ。

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米国では、1つの新薬を市場に出すまでに10年以上の歳月と数千億円規模の費用がかかる。そのうちの大部分を占めるのが、候補薬の多くが脱落していく臨床試験の過程だ。この課題に対し同社は、他社で開発が停滞した新薬候補を買い取り、AIで有効性やリスクの検証を迅速化する戦略をとる。

Formation Bioはこれまでに総額6億1500万ドル(約978億円、1ドル=159円換算)を調達。評価額は18億ドル(約2862億円)に達する。出資者にはアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)、セコイア、そしてOpenAIのサム・アルトマンなどが名を連ねる。

創薬ではなく臨床試験こそが、真のボトルネック

オックスフォード大学で博士号取得を目指し、計算生物学を学ぶ若手研究者だったベン・リウは、アルツハイマー病の治療に役立つ可能性がある新薬のアイデアをいくつか持っていた。彼はその可能性に大きな期待を抱き、複数の製薬会社に売り込もうとした。だが、関心を示した企業は1社もなかった。

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「『候補薬は数多くあるが、すべてを開発するための予算はない』と製薬会社に言われた」とリウはフォーブスに語る。「見つかったばかりの新薬には、それほど大きな価値はないということだ」。

その出来事をきっかけに、彼はある結論にたどり着いた。医薬品の研究開発における最大の課題は、華やかに見える新薬の発見プロセスではなく、臨床開発のプロセスにある。そこでは多くの候補薬が途中で脱落していき、期間も長く、コストもかさむ。

実際、ここ10年で候補薬の数はほぼ2倍に増えた一方で、米食品医薬品局(FDA)が承認する新薬の数は年間約50件程度と、ほとんど増えていないとリウは言う。そして彼は、AIがこうした課題の解決に特に力を発揮できると考えている。

AIは創薬のプロセスをより速く、より低コストにし、新たな治療法の黄金時代を切り開く切り札だともてはやされている。だがリウの見方は、そうした期待とは逆を行くものだ。AIによる創薬革命は、まだ長期戦だ。リウは、より大きな商機は臨床試験の改善にあると確信している。「世間が誤解しているのは、創薬がボトルネックだという点だ。創薬は、もう長い間ボトルネックではない」とリウは語る。

Formation Bioを2016年創業、世界有数の投資家が資金を注ぐ

リウは2016年、コンピューターサイエンティストのリンハオ・ジャンとFormation Bioを立ち上げた。製薬会社の臨床試験をより効率的かつ迅速に進めることを目指す事業だ。ジャンは、創業前にOscar Healthのエンジニアリングチームで働いていた。創業当初の社名が「Trialspark」だったFormation Bioは、製薬大手やバイオテック企業の臨床試験の運営を請け負う、サービス提供型の事業モデルをとっていた。

だがリウは現在、事業拡大を目指し、初期の臨床試験で失敗したり開発が停滞したりした新薬候補の開発を、AIを使って再び軌道に乗せようとしている。そのために彼は、初期段階の候補薬10本を組み入れたポートフォリオの取得を目指している。

OpenAIのアルトマンCEOなどが出資、評価額は約2862億円に到達

ニューヨーク市に拠点を置くFormation Bioを率いるリウの構想には、世界有数の投資家が資金を注いでいる。そこには、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)、セコイア、Thrive Capital、クライナー・パーキンス会長のジョン・ドーア、そしてOpenAIのサム・アルトマンらが含まれる。

Formation Bioは、これまで総額6億1500万ドル(約978億円)を、評価額18億ドル(約2862億円)で調達した。フォーブスの試算では、リウの持ち分の価値は推定1億5000万ドル(約239億円)以上、ジャンの持ち分の価値は推定1億ドル(約159億円)以上に上る。

ビリオネアのベンチャーキャピタリストで、セコイアの元会長でもあるマイケル・モリッツは、「この会社は、過去10年から15年で生まれた新興企業がほとんど揺るがせなかった業界で、大きな存在になる可能性がある」と語る。2016年当時、リウは面識のなかったモリッツに、「AIを活用した次世代の製薬会社をつくる」という構想をメールで売り込んだ。リウによれば、「28分くらいで返事をくれた」というモリッツは、自らこの事業に最初の225万ドル(約3億6000万円)を出資した。

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翻訳=上田裕資

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