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2026.04.24 16:30

OpenAIのアルトマンCEOも出資する米Formation Bio、AIで臨床試験の加速に挑む

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第2相試験前の候補薬を買い取り、AIで開発を加速

資金難に直面したバイオテック企業は、新薬候補の開発を続ける余力を失いつつある。その結果、売りに出される新薬候補は増えている。製薬大手も開発方針を絶えず見直しており、ある候補薬への投資を打ち切って、別の候補薬に資金を振り向ける動きが続いている。一方で、中国は創薬の一大拠点となっており、ライセンス取得の対象になる治療薬も増えている。

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そんな中、Formation Bioが狙っているのは、第2相試験をまだ終えていない新薬候補だ。こうした初期段階の治療薬は、その後の開発に進める確率が3割程度にとどまるため、リスクは大きい。だが、そのぶん見返りも大きい可能性がある。リウは、FormationならAIを使って独自の強みを発揮できると見ている。彼によれば、同社がこの10年で磨いてきた技術を使えば、臨床試験を最大50%速く進められるという。開発が1日遅れるだけで数百万ドル(数億円)規模の損失につながり得る世界では、これは大きな優位性になる。

「候補薬は、第2相試験を終えると価値が大きく高まる。逆にいえば、第1相試験を終えた段階には、まだ割安で有望な候補薬が数多く残っている。第3相試験まで進んだ候補薬を狙うこともできる。だが、本当に有望な案件を安値で買えることはない」とリウは語る。

リウは、候補薬選びの精度を高めるため、業界有数の専門家を集めた。チームを率いるのは、ファイザーで研究開発部門のトップを務めた後に退任したミカエル・ドルステンだ。このチームは、世界中から有望な候補薬を探し出す役割を担う。彼らは、どの薬を買うべきかをより的確に判断するために、AIツールも活用する。Formation Bioのソフトウエアは、英語以外の言語で公表された初期試験のデータも読み取り、中国で見過ごされている候補薬を探し出せるという。

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医療面での効果や事業性の大きさといった観点から、複数の候補薬の優先順位をすばやく組み替えることもできる。そのうえでFormation Bioのチームは、治験参加者の確保や規制当局への申請といった業務にAIを活用しながら、候補薬ごとに適した被験者を見つけ出すという難題にも取り組む。

5つの候補薬を取得し、フランスの製薬大手サノフィにライセンス供与

Formation Bioはこれまで5つの候補薬の買収またはライセンス取得を行ってきた。その中には、変形性膝関節症の治療薬と潰瘍性大腸炎の治療薬が含まれ、いずれもすでに臨床試験に入っている。市場に送り出された薬はまだないが、Formation Bioは2025年6月、慢性手湿疹の治療薬のライセンスをフランスの製薬大手サノフィに供与した。将来のロイヤリティに加えて約6億3000万ドル(約1000億円)を得る契約だ。

忘れられた候補薬を掘り起こすというリウの戦略は、ビリオネアのバイオテック起業家ビベック・ラマスワミがRoivant Sciencesで進めた手法を思わせる。Roivantは今や時価総額210億ドル(約3.3兆円)に達し、幅広い開発パイプラインを抱える。「この取り組みは、我々が初めてではない。PureTechやRoivant、BridgeBioなど、さまざまな先行事例を研究してきた」とリウは語る。もっとも、Roivantの創業はAIが業界全体を席巻する前のことだった。

リウによれば、Formationの差別化要因は、臨床試験を社内で一貫して実施できる体制を持っていることと、AIを使って成功確率を高めようとしている点にある。「私は、中国とAIの台頭によって、創薬そのものはコモディティ化していくと見ている。だが、臨床開発のボトルネックを解消できなければ、患者に届く薬は結局増えない」とリウは語る。

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翻訳=上田裕資

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