“One DS Culture”で世界に挑む。PwCとともに進める第一三共「らしい」グローバル変革

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2026年5月11日

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“One DS Culture”で世界に挑む。PwCとともに進める第一三共「らしい」グローバル変革

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2020年1月の抗がん剤の販売開始は、第一三共の存在感を世界市場で一段押し上げる契機となった。長年磨き上げた「抗体薬物複合体(ADC)」技術を軸に、同社は「先進的グローバルヘルスカンパニー」を掲げて変革を推進。今や「がんに強みをもつ先進的グローバル創薬企業」として確かな地位を築きつつある。
では、次なる成長を見据え、同社はいかなる発想と手法でグローバル変革を加速させていくのか。変革リーダーに求められるものとは何か。
第一三共でグローバルコーポレートストラテジーをリードし、執行役員・経営戦略部長として世界への挑戦の最前線に立つ塚本淳に、変革を伴走支援するPwCコンサルティングのパートナーであるヴィリヤブパ・プルック(エディ)と高橋啓が話を聞いた。

がん領域で存在感を高める「ジャパニーズ・グローバルファーマ」

ヴィリヤブパ・プルック(以下、エディ):2019年度の抗がん剤販売開始以降、米国を中心に「第一三共」の存在感がさらに高まっていると感じています。戦略をリードする立場として、このグローバル市場でのポジションの変化を塚本さんはどう捉えていますか。

塚本 淳(以下、塚本):おっしゃる通り、以前は第一三共といっても、海外の一般の方にはあまり知られていませんでした。それが、直近3年間の米国駐在中には、アパートの管理人の方から「第一三共という会社、知っているわよ」と声をかけられるまでになり、認知が“生活レベル”まで浸透してきたことを実感しました。加えて、オンコロジー領域の人材から「どうしたら第一三共に入れるか」と聞かれる機会が増え、採用面での勢いも感じています。
ADCという技術も、第一三共が成果を出すまでは「終わったテクノロジー」と見られ始めていましたが、今や中国勢も含めて各社が一気に注力し、競争が激しくなっています。インパクトの大きさを感じる一方で、競争の厳しさも強く意識しています。

塚本 淳
第一三共 上席執行役員
グローバルコーポレートストラテジー
経営戦略部長/博士(医薬開発学)

次の勝ち筋は、誰もが挑戦できる「どこからでもグローバル」

高橋啓(以下、高橋):企業の存在感が増し、世界中に薬が流通するようになると、それを支える組織やオペレーションモデルのグローバル化が命題になります。国際競争力の強化や市場拡大を目指すにあたり、第一三共が描く世界観やビジョンはどのようなものなのでしょうか。

塚本:まず、第一三共の良さのひとつは「中長期目線」で成長を考えるところです。短期的な売上のために外から無暗に候補品を導入するのではなく、自社開発にこだわり、患者さんに届いていない革新的な薬を時間がかかっても自分たちで創り上げる。それをビジネスの源泉にするという姿勢は、「第一三共らしさ」としてグローバル変革でも貫きたいと考えています。
もうひとつ重要なのは、「特定の一国が司令塔となり、全体に指示を出す体制にはしない」という考え方です。特定の国や地域が、他の地域を統括したり、一つの本社が全世界を一元的に管理する体制が、常に最適解とは限りません。
私たちが目指すのは、世界のどこにいてもグローバルに挑戦し、価値創出に貢献できる組織です。地域ごとの強みや知見を結集しながら、第一三共にしか実現できない、世界最高水準の仕組みを柔軟に取り込み、進化させていきます。いわば分散連携型のグローバルモデルです。

エディ:それは、世界中の多様な人材が「One DS Culture」のもとで信頼し合い、成長を目指す取り組みにも通じますね。各地域が共存・協働し、ともに挑戦するカルチャーが国を超えて育っていると感じます。一方、一国が強力なリーダーシップをとらない分、難しさもあるのではないでしょうか。

塚本:確かに、ひとつの国のやり方を世界に適用した方が効率的で楽な側面はあります。ですが、「それでは機会を逃すことも多いだろう」というのが第一三共の感覚です。「良いと思えること」を、その国・その場所・その機能に閉じるのではなく、「もっと広げられないか」「もっとインパクトを出せないか」と考えて実行していく。そこにこそチャンスがあると考えています。

高橋:なるほど。自律分散的に新しい知見を生み出しながら、強い連携のもとで進化する、まさに“DS流グローバル”を追求していくということですね。

塚本:その通りです。製薬業界に限らず、こうしたモデルはほとんど例がないと思います。世界で戦う日本企業でも開発は日本中心であったりしますが、第一三共は臨床開発も含めてグローバルで実行しています。効率性に多少の課題があったとしても、特定の地域に偏って他の地域を置き去りにするようなグローバル化は行わない。私たちは「どこからでもグローバル」を目指すつもりです。

国境を越えて醸成する「第一三共らしさ」

エディ:グローバル変革が進むほど、自分たちの「コア」を明確にし、一枚岩で取り組むことが重要になると考えていますが、国内外で豊富な経験をお持ちの塚本さんは、「第一三共らしさ」をどう解釈されていますか。

塚本:大きくは「中長期目線」と「主体性」だと思います。主体性を言語化すると、単なるボトムアップというよりは、社員から経営陣まで、みんなが自分の頭で考えて提案する文化と言えるでしょう。分かりやすいのがR&D(研究開発)で、ADCも「やりたい」と手を挙げれば前に進められる環境があった。「挑戦する意思」と「勝ちにいくための筋道」が揃えば組織として背中を押す。ここは第一三共の特長だと思います。
それから「自由闊達さ」ですね。品川フェスティバルという社内イベントでも、当社では従業員のみならず部長や所長までもがパフォーマンスを練習して皆の前で披露します。仕事でも立場にとらわれず、ヘルシー・コンフリクト、ヘルシー・ディスカッションができる。考え抜いて提案し、受け止めて一緒に磨き上げる、という雰囲気があります。

高橋:「サイエンスの前ではみんな平等」という言葉も象徴的です。これはサイエンス人材特有のものなのか、それとも第一三共としての考え方なのでしょうか。

塚本:似たような表現で「Patient Centric Mindset / Engagement」がありますが、外から来た社員、特に海外出身の人からは「この会社のPatient Centricは本当にPatient Centricだよね」と言われます。当社では純粋に患者さんの声を聞くことが大事だと考えています。「サイエンスの前ではみんな平等」という考え方も同じで、医薬品として形にして患者さんのもとに届けることに、素直に情熱をもって取り組む社員が多いと思います。

高橋:なるほど。とはいえ、なぜそうした思想が残り続けるのでしょう。

塚本:会社という生命体のDNAかもしれません。サイエンスに対してポリティカルな力を振りかざしても、結局、成功しません。素直にサイエンスに向き合う人のほうが任せてもらえますし、仕事が回ってきます。重要なのは、「ポジション」ではなく、「何を」主張しているか。そこに尽きると思います。

エディ:私も過去に議論を尽くし、最終的にサイエンスベースで最適解を求めて合意する現場を見たことがあります。第一三共も、自主性を尊重し、議論しやすい環境が根づいていて、それが新たな創造の原動力になっていると感じました。私たちが伴走するうえでは、その組織文化や活動のプロセスを深く理解することが不可欠です。戦略的かつ効率的な方法を見つけつつも、「らしさ」が最大限に発揮できる形で再現性をもたせていかなければなりません。

ヴィリヤブパ・プルック(エディ)
PwCコンサルティング 執行役員
パートナー

高橋:そういった意味では、グローバル変革の加速に向けて、今後どのように「らしさ」を育み、進化させていくかも重要な鍵になると思います。塚本さんは、今の第一三共にとって何がチャレンジになると思われますか。

塚本:主体性やボトムアップの風土は当社の強みですが、グローバル化が進み多様な人材が増えるほど、意識や判断基準が分散してしまうリスクも高まります。そこで私たちは「One DS Culture」を掲げ、組織としての一体感の醸成に取り組んでいます。戦略が曖昧なままでは、日本では暗黙知や阿吽の呼吸で進められることも、グローバル環境では通用しません。だからこそ、考え方や方向性を丁寧に言語化し、必要な部分はトップダウンで明確に示すことも重要だと考えています。
国や地域ごとの価値観やカルチャーの“壁”を乗り越え、ベクトルを揃えることは大きなチャレンジです。しかし、適切な設計と仕掛けによって、違いはむしろ組織の力へと転換できると捉えています。

高橋:もうひとつ、「染み出し」の価値についてはどうお考えですか。役割と責任が明確化されるほど、そこから染み出して何かをしようとする人が減る可能性があります。しかし、その染み出しにこそイノベーションの種があり、それは第一三共らしさでもあると思うのですが。

塚本:以前、海外の人事から「カルチャーや行動様式が自然に広がっていく“染み出し”そのものを、Role & Responsibility (役割と責任)に組み込めばいい」という示唆を受けたことがあります。
研究の世界には「2割はアングラ(自由な研究)、報告は8割」といった考え方がありますが、ビジネスにもそれに通じる発想があっていいのではないかと思っています。すべてを管理や指示で縛るのではなく、「2割は自ら考え、主体的に動くことが期待値である」と明確に定義する。それを個人の資質ではなく、組織としてのストラテジーとして位置づけることで、世界中どこにいても共通の行動原則として機能させたい。そんな方向で整理できないかと考えています。

高橋:それは面白いですね。「らしさ」を守りながら変わっていく。大きな変革に立ち向かっていくなかで、一人ひとりが立ち返れる指標になりそうです。

高橋 啓
PwCコンサルティング 執行役員
パートナー

難題を解決してみせる――これからの変革リーダーの条件

高橋:変革の中心には常に強いリーダーシップが必要です。そして多様な人材が加わるほど、「らしさ」を伝える“伝道師”が必要になると思います。伝道師となるリーダーに求められるマインドセットや行動はどのようなものだとお考えですか。

塚本:20年前、第一三共がまだパイプラインも知名度も十分でなかったころ、人材を引きつけたのは、現地法人で採用した、ある“リーダー”の存在でした。困難な局面でも部下にはポジティブかつプロアクティブに接し、改善を積み重ねていく。優秀な人一人の影響力を実感し、私もその人の下で多くを学びました。
そして今、第一三共のリーダー層で「この人はすごい」と感じるのは、コンフォートゾーンに留まらない人です。常に挑戦し続けている。言葉にすると平凡ですが、慣習・意見・プラクティスに対しても最適解を目指して変えていく。そういう人が、変革の伝道師として“影響”を次代につないでいくのだと思います。

高橋:では、塚本さんご自身はどのようなリーダー像を目指しますか。

塚本:R&Dの現場やグローバルプロジェクトを経験するなかで痛感したのは、「サイエンスに忠実であること」の大切さと、それを患者さんが本当に必要とするソリューションへ転換する難しさです。人は合理的なようで不合理でもあるので、頭で分かっていても動けないときがある。だからこそ、対話して、健全なコンフリクトを通じて互いに影響し合いながら自分を磨かなければなりません。私はその往復を大事にし、ブラッシュアップした考えを前に進めていきたい。そこにリーダーの仕事があると信じています。
それから私自身は、最初から大きな目標を掲げて一直線に進むタイプというより、小さな変化、小さな努力、小さな成功を積み重ねて、結果として想像もしていなかった大きな変化につなげてきた人間です。日々の積み重ねを面白がれる人と一緒に働きたいし、私もそういうリーダーでありたいですね。

エディ:サイエンスを安全に届けるという使命のもと、R&D起点で戦略を組み立て、現場の対話と意思決定を積み重ねながら成長につなげていく姿勢がよく伝わります。

高橋:多様な取り組みを基盤とした第一三共のグローバル変革において、塚本さんご自身があえてひとつ役割を担うとすれば、それはどのようなものになるとお考えでしょうか。

塚本:正直に言えば「今は思いつかない」というのが答えです。今思いつかないような役割なり行動を取ることが必要になるのだと思います。私たちがこれから直面するのは、まだ誰も答えをもっていないような難題です。だから私は、コンフォートゾーンに胡坐をかかず、論理と情熱をもって努力を続ける。解決に向け、いち早く全力を注ぐ。「いちばん難しい課題を解決してみせる」という覚悟で、前に進みたいと思っています。

塚本 淳

第一三共 上席執行役員 グローバルコーポレートストラテジー 経営戦略部長/博士(医薬開発学)。1994年三共入社。国際開発部にて海外開発・薬事調整、国内臨床開発モニタリング業務に従事後、2000年に米国開発子会社Sankyo Pharma Development(ニュージャージー州)へ赴任。開発業務およびプロジェクトマネジメントを担い、日米の開発手法の違いを踏まえたグローバル業務運営を実践する。帰任後はプロジェクト推進、研究開発企画、ポートフォリオマネジメント、開発薬事などを歴任し、2022年再度米国赴任。3年間で領域戦略機能を立ち上げ2025年帰任、同4月より現職。

ヴィリヤブパ・プルック(エディ)

PwCコンサルティング 執行役員 パートナー。専門分野は医療・ライフサイエンス、トランスフォーメーション戦略、チェンジマネジメント、テクノロジー。20年以上にわたってコンサルティングファームや製薬会社においてグローバルな組織リードを経験。組織戦略、IT/デジタルトランスフォーメーション、患者サポートプログラム、海外事業展開、新規事業立上げに関する経験と知見を豊富に有する。

高橋 啓

PwCコンサルティング 執行役員 パートナー。戦略コンサルティングファーム出身。国内大手製薬会社のアカウントリードを担い、DXを起点としたグローバルレベルでの全社変革に向けた戦略策定から実行支援までのリーダーを務める。また、企業のヘルスケア領域への参入を業界横断的に支援するヘルスケア参入支援(Healthcare entrants initiative)の立ち上げリーダーでもあり、さまざまな業種からの新規参入や事業拡大を検討している企業を支援。現在はPwC米国に出向中で、日系製薬会社のグローバルトランスフォーメーション支援を現地でリードする。

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