カナダ政府の最新データによると、カナダではおよそ20人に1人が医師の手助けによる死を選んで亡くなっている。こうした「医療幇助死(medical assistance in dying: MAID)」は、いまではカナダ人の死因の5位になっている。
重い病気や耐えがたい苦痛を抱える患者にとって、この選択肢は思いやりのある行為として捉えられている。一方でその急速な拡大は、政府が運営する医療制度は「限られた公的資源」という現実にどう対応すべきなのかという、厄介な問いを浮かび上がらせている。
複雑な疾患や慢性疾患、あるいは終末期の患者のケアは、どんな医療制度でも最も高額な部類に入る。そのため、政府が一方で医療費を負担し、他方でどの医療に費用をかける価値があるかを判断する医療制度は、内在的に緊張関係をはらんでいると言える。
こうした緊張関係は、米国でも注視するに値する。米国ではすでに医療費のほぼ半分を政府が負担しており、カナダ式の「単一支払者制度」(医療費を支払う主体が国や公的機関に一本化されている仕組み)の導入を求める声も高まっているからだ。
医療幇助による死を認める政策を採っているのはカナダだけではない。こうした政策は多くの先進国で広がっている。
オランダでは2002年にこの処置が合法化された。2025年には1万人あまりが安楽死を選択し、前年から3.8%増えている。
ベルギーでは2025年、4500人近くの患者が医療幇助による自殺で亡くなり、死亡者全体の約4%を占めた。スペインでも同年、1000人あまりの患者が医師による死の幇助を受けている。ルクセンブルクやスイス、オーストリアといった国々も医療幇助による死を合法化している。英国では下院で死の医療幇助法案が可決されたものの、その後、上院で審議が滞っている。
注目されるのは、こうした制度が各国に広がっていることだけでなく、適用対象となる患者の範囲もまた広がっていることだ。



