ロシア軍による現在の攻勢の主目的のひとつは、ウクライナ東部ハルキウ州の重要な兵站拠点であるクプヤンシク市の占領にある。ロシア軍は同市の攻略を繰り返し試みてきたが、市内を北から南へ流れるオスキル川に依拠したウクライナ軍の堅い防御に阻まれている。ロシア軍はとくに、市に対する本格的な攻撃を仕掛けるのに十分な数の兵員や装備を、オスキル川の西岸へ送り込むことができていない。
渡河作戦は軍事作戦のなかでもとりわけ難易度が高いものと広く認識されており、ロシア軍もまたウクライナに対する戦争を通じてそれに苦戦してきた。ロシア軍はこの戦争で直面してきたほかの課題の場合と同様に、渡河の支援でも先端技術、なかんずくドローン(無人機)と電子戦(EW)システムの活用を試みてきたが、これらの技術が有意義な効果をもたらしているようには見えない。
ロシア軍によるオスキル川渡河の試み
クプヤンシクの重要性は、鉄道や道路を含む主要な補給路が通る兵站・輸送拠点だという点にある。同市を掌握すれば、ロシア軍はオスキル川沿い、さらにはもっと広くクプヤンシク北西のハルキウ市と南東のルハンシク市を結ぶ軸で作戦行動を行い、前線を押し上げていくための回廊が開けることにもなる。
ロシアの当局者や軍事ブロガーはこれまで、ロシア軍がクプヤンシクを完全な支配下に置いたとたびたび主張してきたが、オープンソースの情報はウクライナ軍がなお市内の広い範囲を保持していることを示しており、ロシア側の主張と大きく食い違っている。ただし、クプヤンシク市内やその周辺にロシア軍の孤立した陣地が点在していることは確認されており、一例を挙げれば、放棄されたある病院建物はロシア軍の分隊規模の部隊に占拠されている。
ロシア軍がクプヤンシクを攻略できていない原因は、大規模な攻撃を支えるのに十分な数の兵員や装甲車両を、オスキル川の対岸に移動させることができていない点に帰する。ロシア軍は2022年2月に開始した全面侵攻の初期にオスキル川を越えたが、その年のうちに東岸側へ押し戻された。



