しかし、ウクライナ軍の防御は戦闘空間全体に広く分散しているため、ドローンで攻撃するのは容易ではない。オスキル川の近くで行動する部隊もあれば、防御線のより深くに陣取る部隊もある。また、ウクライナ軍の防御には火砲、有人拠点、攻撃ドローン、ヘリコプター、装甲車両など多様なシステムが組み込まれており、それぞれ異なる地点に配置されている。このような分散性と多様性により、防御側の部隊や拠点、装備の位置を特定して破壊するのは難しくなっており、たとえ一部が制圧されても、ほかは機能し続けることが可能な仕組みにもなっている。
さらに、ウクライナの対ドローン防御は広い範囲に及び、絶えず進化している。ウクライナ軍は多層防御網を構築しており、それにはロシア軍のドローンの信号を妨害する電子戦システムの大量かつ広範な配備も含まれる。また、各地域で対ドローン部隊が域内を移動しながらロシアのドローンを追跡・撃墜しているほか、それぞれの兵士も散弾銃や対ドローン専用弾を携行している。このような多層的対処法は、ロシア軍の架橋作戦を支援するドローンの有効性を制限することにおおむね成功している。
電子戦による渡河支援
渡河を試みるロシア軍部隊にとって、最大の脅威になってきたのはウクライナ軍のドローンである。そのためロシア軍は高度な電子戦システムを用いて、ウクライナ軍のドローンが有効に運用できなくなる区域を局所的につくり出し、渡河しようとする自軍部隊に一定の防護を与えようとしてきた。
ロシア軍は3月下旬にもこの手法を試みたと伝えられる。ロシア軍はポーレ-21、R-330Zhジーテリ両電子戦システムによって、オスキル川の浮橋(ポンツーンブリッジ)設置地点の上空にジャミング(電波妨害)からの「傘」を設け、大隊戦術群の渡河を支援しようとしたとされる。
だが、これらのシステムは渡河の成功につながらなかった。これもやはり、ウクライナ側の防御に縦深が確保されているためだった。ウクライナ軍の偵察部隊はたとえドローンが使えない場合であっても、渡河に向けた動きの可能性がある集結を探知し、その後、火砲や、ジャミングの影響を受けないドローンの攻撃目標にすることが可能である。3月下旬の試みでは、ウクライナ側は諜報活動を通じてロシア軍部隊の集結を確認し、電子戦による妨害を受けない光ファイバー誘導ドローンで攻撃した。


