AIの活用は、特定の業界にとどまらない。5年前にウクライナから米国へ移住したネゴディウクは、4つのECプラットフォームにおいて、コンテンツ制作から価格最適化、レビュー管理、カスタマーサービスに至るまでの業務をAIで自動化した。ある企業に対しては、営業担当者を介さずに、3ヵ国語で1日100件以上のコールドコールと見込み客の選定を行う音声エージェントを構築している。さらに、教育サービス企業向けには保護者と自動で連絡を取りながら学生を登録する仕組みを、物流企業向けにはオンライン上の評判を監視し、インシデントを報告するシステムも提供している。これらはいずれも容易に構築できる一方で、生産性を飛躍的に高めるAI活用の実例である。
AIソリューション構築はどこから始めるべきか
いまやAIの実装を学ぶにあたり、高度なコーディングスキルは必須ではない。Claude CodeやOpenAI Codexといったツールの登場により、プログラミングに不慣れな非エンジニアであっても、バイブコーディングと呼ばれる手法を通じて、プロンプトを入力するだけでAIにコードを書かせ、ソリューションを構築できるようになっている。
しかし、実際にはそれほど単純ではない。ネゴディウクは、ユーチューブ動画の視聴やオンライン講座の受講に加え、試行錯誤を繰り返すことで、AIコーディングに必要な知識を独学で身につけてきた。主要なAIチャットボットのプラットフォームに精通するだけでなく、大規模言語モデルの構築をはじめ、タグ付け、記述作成、データ解析、セキュリティ確保、ガバナンス設計など、幅広いツールへの理解が求められたのである。
しかし、こうしたノウハウの習得が、AIによる自動化を志す経営者にとって障壁となるべきではない。重要なのはコーディングスキルそのものではなく、ビジネスのどの領域にAIを適用すべきかを見極めることにある。そのためにネゴディウクは、「AI導入準備度診断」の活用を推奨している。これは彼が日常的に提供しているサービスであり、ヒアリングや詳細なアンケートに加え、現場への実地訪問が含まれている。
「診断によって、大きな効果が見込める機会を特定できる。言わば、AI実装の可能性と投資対効果を可視化する戦略的ロードマップだ」と彼は語る。
ネゴディウクは、AIソリューションは単体で完結するものではなく、企業が注力すべきは既存システムの刷新よりも、AIとの統合にあると強調する。なぜなら、AIはソフトウェア産業に変革をもたらすものの、代替するものではなく、エンタープライズソフトウェアのエコシステムを排除するよりも強化する存在だからである。


