新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)やウクライナ侵攻によるインフレの衝撃に続き、イラン情勢の緊迫化やホルムズ海峡の封鎖を背景に、新たな物価高の波が押し寄せている。エネルギー価格の高騰により、3月の米国のインフレ率は3.3%へと急上昇し、2024年5月以来の最高水準を記録した。
国連食糧農業機関(FAO)は4月上旬、中東情勢の混乱が長期化した場合、石油だけでなく肥料の輸送にも影響が及ぶと警告した。エネルギー価格の上昇を受け、FAOの世界食料価格指数は3月も小幅に上昇した。農作物の収穫量が減少すれば、食料価格は今後さらに高騰する恐れがある。
世界中の消費者が収まる気配のないインフレを懸念する中、影響の大きさは地域によって異なるようだ。経済協力開発機構(OECD)によると、国際的に比較可能な水準に調整したインフレ率は、米国が過去6年間、西欧の多くの国を上回った。米国では2025年12月の消費者物価が6年前の2019年同月と比べて26%以上上昇したのに対し、ドイツでは22%、イタリアでは19%、フランスでは15%の上昇にとどまった。例外は英国で、同期間のインフレ率は29%近くに達した。
米国のインフレは国内だけでなく海外でも議論の的となっており、ファストフード店マクドナルドのセットメニューが12ドル(約1900円)、ガソリン1ガロン(約3.8リットル)が4ドル(約630円)、卵1ダースが6ドル(約950円)といった価格に、消費者は絶望感を抱いている(卵の価格高騰は鳥インフルエンザの発生にも起因している)。他の国々と比較して、米国では医療やイベントチケットといった特定の分野の価格が著しく高い。同国のドナルド・トランプ政権による関税措置もインフレの要因となっており、消費者を直撃しているさまざまな価格上昇圧力に拍車をかけている。
途上国のインフレは先進国より深刻
物価上昇に関する報道は減っている一方で、インフレによる打撃が米国や西欧より深刻な国もある。その多くは東欧諸国や発展途上国だ。OECDによると、ポーランドでは2019年後半以降、消費者物価が48%近く上昇している。この数値を上回るのはハンガリーの57%で、エストニアの47%、リトアニア、ブルガリア、チェコの44%もこれに迫っている。これは、ブラジル(39%)やインド(29%)といった新興国のインフレ率を上回っている。東欧諸国は、ロシア産天然ガスへの依存やウクライナ侵攻に伴う供給網の混乱、対ロシア制裁の影響を特に強く受けた一方で、ブラジルの物価高は世界的な圧力や通貨レアルに対するドル高のほか、一般的にインフレを起こしやすい経済成長が複合的に作用した結果だと指摘されている。
深刻なインフレに苦しみ、過去数年間にわたる世界的な圧力に加え、重大な構造的問題が露呈している国はトルコだ。同国では通貨リラが急激に下落する中、物価が6年間で700%近く上昇したにもかかわらず、政府はこの問題を抑制するための対策を講じてこなかった。OECD加盟国以外で年間100%を超えるハイパーインフレに見舞われている国は、ジンバブエ、スーダン、アルゼンチン、ベネズエラだ。



