ファイルを他のデザイナーやクライアントに渡す前に、「Group 47」「Layer Copy 3」といった無名のレイヤーをすべて適切な名前に書き換える。手作業なら数時間を要するが、AIが画面上のオブジェクトの意味を理解して命名していく。
さらに、数10ページにわたる配布資料に非破壊フィルタを一括適用するデモも見せた。AIはAFFINITYの非破壊編集を理解しており、元のピクセルには触れずフィルタをレイヤーとして重ねた。だが最も驚いたのはその先だ。
Claudeが、AFFINITYに本来存在しないUIパネルをその場で動的に生成したのだ。Claudeがレイヤとなるパターンの生成パラメータを調整するスライダー付きでインターフェースコードを生成し、ユーザーがその場で調整可能にできるようにした。
つまりAFINITY内部の処理エンジンは使っているものの、機能の面では目的を達成するためにClaudeがその場でコードを書いて拡張してみせたのだ。
もちろん、この機能がどこまで一般提供し、誰もが使えるレベルになるのか、それともコンセプト実証のた目にベータ提供のまま終わるのか、今後の見極めが必要だ。しかし、ツールに存在しない機能すらAIが動的に作り出せるという可能性が示されたことの意味は大きい。機能の多寡で製品を比較する従来の評価軸そのものが、揺さぶられている。
プレスリリースではCanvaとAnthropicの複数年にわたる協業も発表され、CanvaのDesign EngineとVisual SuiteがClaudeに直接統合されることが明らかになった。ClaudeやChatGPTなどで生成された結果は、MCPを通じてCanvaやAFINITYに取り込み、レイヤー構造に変換して共同編集・公開する。AIプラットフォームが増えるほどCanvaの価値が上がるという“AIクリエイションハブ”としてのポジションを狙い、Adobeとは異なる方向のアプローチから行おうとしている。
“デザインツール選択”の基準を変える挑戦
Canvaの動きを俯瞰すると、彼らが競合とはまったく異なる方法でプラットフォームになろうとしている戦略が見えてくる。
かつてAdobeは現実の制作工程をデジタルへ移行させた、当時の工程を再現できるツールを求めた。重視されたのは深さと精密さ、それに高品位な作品を仕上げるために必要な多種多様な機能だった。その結果として、各ツールの習熟がプロの条件となり、ワークフローとAdobe Creative Cloud全体がひとつの生態系に収斂していった。
それはAdobeが常に批判されているような意図的な囲い込みというより、プロの生産性を最大化するための合理的な帰結だったともいえる。
Canvaが示しているのは、それとはまったく別の成り立ち方をする生態系だ。
AFFINITYを全機能無料で提供し、モーションデザインのCavalryも同様に無料化し、動画編集のDaVinci Resolveや高品位写真現像ツールCapture Oneとの密な連携も結び、MCPを通じてAI機能が連携することが発表されている。


