マーケティング

2026.04.18 14:15

世界で唯一「夫婦同姓」の日本。500年後にはみんな佐藤に?

Sato 2531

Sato 2531

広告コミュニケーションの世界最高峰の祭典であるカンヌライオンズで、社会課題を取り上げたものが高評価を得やすいと言われて久しい。同時に、AI時代になったことで返って“ユーモア(Humor)の重視”も、運営サイドから打ち出されている。

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“ユーモア”と片仮名で語る時、我々日本人の脳裏に浮かぶのは、笑いである。漫才やコントなどのいわゆるお笑いに近い感覚を抱く。しかし、英語でHumor(ヒューモア)という時は、ヒューマニティ(人間性)という言葉も連想される。いわゆるお笑いの感覚では無く、日本で使う片仮名で言うと、“ウィット”に近い。

2531年には日本人全員の名字がSATOに?

この英語のHumorをみごとに体現し、カンヌライオンズ2025において日本勢で唯一複数部門で高評価を得たのが、一般社団法人「あすには」による「Sato 2531」だ。クリエイティブストラテジー部門とクリエイティブデータ部門のゴールド他を獲得した。

Sato 2531(Case study) - ASUNIWA

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日本は、世界で唯一“夫婦は同じ名字にしなければならない”と法律で定められている国だ。選択的夫婦別姓の導入が叫ばれてはいるものの、いまだ法律改正には至っていない。そんな中、ジェンダーイコーリティを掲げる「あすには」がアクションを起こした。

東北大学の吉田浩教授と協力して、このまま夫婦同姓を強いていると、約500年後の2531年には、日本人全員の名字がSATOになってしまうという、統計学に基づいたシュミレーションを発表したのだ。

SATOは現在、日本で一番多い名字だが、それでも全体の1.5%程度に過ぎず、様々な名字は全国で13万以上も存在する。選択的夫婦別姓の導入を即座に目指すというよりは、そのことに関する議論を活発化したいというのが狙いだ。

さらに、著名な会社やアーティストやアスリート、全部で40の対象者に名前をSATOに変えてもらうキャンペーンを、4月1日のエイプリルフールの活動として実施した。例えば、LIFULL HOME‘Sの住まい探偵ホームズくんはが佐藤くんに、TINTO COFFEEはSATO COFFEEに。プロ3×3バスケットチームのTOKYO BBは選手全員がSATO名のユニフォームで登場し、オイシックス・ラ・大地の野菜類の生産者名はみな佐藤さんと記載された。

“2531年には日本人全員の名字がSATOに”という彼らのシュミレーションに実感性を持たせ、多くのメディアにも取り上げられ話題化にも成功。筆者自身、夕方のテレビ番組で「SATO2531」のニュースを観たことを記憶している。この施策をエイプリルフールに実施していることからも、重苦しい本気さで展開しているわけではなく、ある種のユーモアやウィットで実施していることが感じられる。

結果として、102カ国の1500以上のメディアで取り上げられ、3億3千万以上のインプレッション(閲覧数)を獲得した。選択的夫婦別姓への一般的な支持は73%と記録を更新し、地方行政の支持も78%、2025年3月の国会議員への調査では65%が好意的な意向を示し、当時の総理大臣の積極的な発言も引き出した。また国連でも取り上げられ、2024年10月29日には国連が日本政府に対して、2年以内の法律変更を促した。

一見「重い」と思われるようなテーマも、お笑いという感覚のユーモアではなく、ヒューマニティを含むウィット=Humorを活用することで、多くの人に届けることができるのだ。

写真② 最終日の夜、メイン会場の外側には「来年また会いましょう」のメッセージが。 (カンヌライオンズ2025にて筆者撮影)
最終日の夜、メイン会場の外側には「来年また会いましょう」のメッセージが。 (カンヌライオンズ2025にて筆者撮影)

文=佐藤達郎

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