経営・戦略

2026.04.19 16:00

4年で地方新聞131紙を傘下に──73歳ビリオネアが描く「新聞再生」の勝ち筋

Lawrey - stock.adobe.com

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この4年で全米の地方新聞131紙の経営権を握った米ビリオネアがいる。デビッド・ホフマン(73)、純資産26億ドル(約4108億円。1ドル=158円換算)を持つ起業家だ。買収した48紙はすべて黒字、支配権を握った大手チェーンの株価は発表後に2倍になった。

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米国では過去20年で新聞の約4割が休刊に追い込まれ、地元紙が1紙もない「ニュース砂漠」と呼ばれる地域に5000万人が暮らす。地方紙は米国において、地域の学校・行政・スポーツを地元住民に伝える社会的インフラと位置づけられており、その消滅は深刻な課題となっている。ホフマンは、大手がレイオフで収益を捻出する業界慣行に背を向け、独自の手法で地方紙再生に挑んでいる。

全米で新聞の約4割が姿を消し、5000万人がニュース砂漠に取り残されている

米フロリダ州ネープルズの高級住宅街ポートロイヤルにあるホフマンの邸宅の評価額は、1億500万ドル(約166億円)とされている。広さ約2250平方メートルのこの家の玄関先には毎朝、全米29州の140紙の新聞が届けられる。そのうち9紙を除くすべてがホフマンが所有する新聞で、発行部数は5000部から25万部まで幅広い。彼は、湾を望む青い革張りのデスクチェアに腰を下ろし、執務室に運び込まれた新聞に目を通し、2つの山に分けていく。

1つはそのまま捨てる山で、もう1つは赤ペンで書き込みを入れる新聞の山だ。彼は、その書き込みの内容を全米有数の新聞チェーンであるリー・エンタープライゼズの暫定CEO、ネイサン・ベッケと確認する。ホフマンは2026年2月に同社の支配持ち分を取得した。彼が目を留めるのは、扇情的な見出しや政治的な内容だ。たとえばAP通信の記事は、ホフマンにとってややリベラル寄りに映ることがある。また、地域の実情を正確に伝えていない記事も好まない。

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「私は米国の新聞を救うつもりだ」とホフマンは言い切る。42紙を直接保有している彼は、「セントルイス・ポスト・ディスパッチ」や「バッファロー・ニュース」「オマハ・ワールド・ヘラルド」など70紙以上を発行するリーの53%の株式を保有している。「私は、米国のために意味があり、広く影響を及ぼすことを成し遂げたい」とホフマンは語る。

だが、新聞業界が置かれた状況を踏まえると、その主張はかなり大胆だ。ノースウェスタン大学のメディル・ローカル・ニュース・イニシアチブによれば、米国では過去20年で4割近くの新聞が姿を消し、5000万人が信頼できる地域情報にアクセスできない「ニュース砂漠」に取り残された。しかも状況は悪化しており、2025年だけでも130紙以上が休刊した。インターネットも救いにはなっていない。メディルによると、米国の主要新聞100紙の月間ユニークページビューは、この4年で平均45%超減少した。

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翻訳=上田裕資

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