経営・戦略

2026.04.19 16:00

4年で地方新聞131紙を傘下に──73歳ビリオネアが描く「新聞再生」の勝ち筋

Lawrey - stock.adobe.com

レイオフを避け、超地域密着型の報道「ハイパーローカル」に力を入れる

しかしホフマンは、地方紙を単に延命させるだけでなく、再び成長軌道に乗せる戦略を見つけたと考えている。その中身は、手元資金を守りつつ利益を確保し、同時に彼が「ハイパーローカル」と呼ぶ超地域密着型のニュースにいっそう力を入れるという、一見シンプルなものだ。全米最大の新聞チェーンであるガネットや、170紙超を傘下に持つパームビーチ拠点の投資会社アルデン・グローバル・キャピタルは、いずれも人員削減で悪名高い。だがホフマンは、レイオフを「口にしてはならない言葉」だと位置づける。

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むしろ彼は、観光やスポーツ、ビジネスに関する地域のニュースを増やすために、ニュースルームの人員を一部増やしてさえいる。そうした地域を後押しする報道こそが、コミュニティーの健全さにとって重要だというのが彼の持論だ。

ホフマンは新聞の買収を進める一方で、給与計算を一本化し、法務やマーケティングといった機能を複数の新聞で共有し、ときにはプリント版の発行頻度も減らしている。オンラインでは有料購読モデルへの移行を進めている。各地域紙のパブリッシャーは、それぞれ損益に全面的な責任を負い、目標を達成すれば利益の配分を受けられる仕組みだ。

リー・エンタープライゼズの負債の金利を9%から5%へ引き下げ、年間約28億円の利払いを削減

その戦略は、すでに成果を上げ始めているようだ。ホフマンが2022年以降に買収し、ホフマン・メディア・グループを通じて完全保有している48紙は、すべて黒字だ。リー・エンタープライゼズでも、彼が投入した資金によって財務改善が進んだ。リーは2026年1月時点で4億5500万ドル(約719億円)の負債を抱えていたが、これは2020年にバークシャー・ハサウェイ傘下の31紙を買収した際の借り入れが残っていたもので、金利は9%だった。ホフマンは、5000万ドル(約79億円)の第三者割当増資を引き受け、そのうち3500万ドル(約55億円)を自ら拠出した。これによりリーは、今後5年間の金利を5%へ引き下げる条件で借り換えを実現し、年間1800万ドル(約28億円)の利払いを削減した。

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リーの経営権を2月上旬に握ったホフマンは、追加の改革にも着手した。彼は、それまで同社のCOOを務めていたネイサン・ベッケを暫定CEOに起用した(前CEOは今回の取引の一環として退任していた)ことに加え、取締役会の3分の1を削減し、一部の印刷工場のオペレーションの統合も進めた。「チームは勝てていなかった。新しい監督が必要だった」とホフマンは語る。リーの株価は、ホフマンによる買収以降に2倍に上昇した。

高校スポーツを柱にスポーツテック企業と提携し、各地で広告と購読の契約を獲得

リーの財務基盤を安定させたホフマンは、超地域密着型の報道を強化している。彼がその柱として重視するのが、地域の人々を結びつける力があると信じる高校スポーツだ。彼はまた、ネブラスカ州のスポーツテック企業Hudlと提携を結んだ。同社のテクノロジーは、新聞各紙が試合のハイライト映像をほぼリアルタイムでオンライン配信できるようにするもので、購読者の定着や広告主の獲得につなげられる。リーは、すでにセントルイスで導入しているHudlの技術を、今後6〜8カ月でほかの市場にも展開する方針だ。

ホフマンは現在、リーの主要市場で地元の企業経営者と会うために各地を回っている。3月にセントルイスから始めたこの訪問は、その後ネブラスカ州オマハ、ニューヨーク州バッファロー、バージニア州リッチモンドとロアノーク、ウィスコンシン州マディソン、フェニックスへと続いている。各地で彼は、企業に対し、購読契約や広告出稿を売り込んでいる。自らが「トップ営業マン」でありたいと考えているホフマンは、すでに年間50万ドル(約7900万円)超の広告収入と500件の新規購読を獲得した。

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翻訳=上田裕資

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