どうすれば人間の判断力を失うことなくAIを活用できるか
こうした状況は、人間が簡単に適応できるものではない。新しいスキルの習得や、変化への順応といった、従来の適応モデルでは不十分だ。環境そのものが、個人がコントロールできないような形で変化を遂げつつある今は、しなやかな適応力を、組織内の業務設計の仕組みの中に組み込まなくてはならない。そこには、ガバナンスや意思決定の構造、ワークフロー、インセンティブ、責任構造も含まれている。こうしたシステムは、人間の能力を支えるものである必要がある(人間の能力が、それ自身で持続すると決めてかかるのではなく)。
AIが意思決定の仕組みの一部を担いつつあるなら、リーダーは、そうした決定事項で人間がどのような役割を果たすのかを明確にする必要がある。人間の判断力を弱めることなく、組織内でAIをいかに活用していくべきかを再考する必要がある。思考の多くをAIが担うシステムで、人間が実際にどのような役割を果たすのかを、はっきりと定めなくてはならない。要するに、最終決定権を握るのは誰か、AIシステムの提案を実行に移す前にどの程度まで理解する必要があるのか、疑問を呈すべきタイミングと、支持するタイミングはどこかを明らかにするということだ。
すべてのプロセスが、スピード向上のために最適化されることは避けるべきだ。いくつかのプロセスでは、あえて立ち止まり、理解と説明責任を確保することが必要だ。ありとあらゆる摩擦を取り除けば、短期的には効率が向上するかもしれないが、長期的には能力が損なわれる可能性がある。目指すべきは、判断力を犠牲にせずにスピードを向上させることだ。
私たちは、仕事の進め方を形作るシステムに、AIを統合している。そうしたシステムは同時に、その内部で人間がどう思考し、どう行動し、どう責任を取るのかを形作り、変化させている。
あらゆるワークフロー、あらゆるツール、あらゆる意思決定モデルが、こうした変化に影響を及ぼしている。この影響はすでに、企業内で具体化しつつある。
問題は、それらが意図せず起きてしまうことなのだ。


