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2026.04.24 12:00

2000トンの砂が100メガワット時のエネルギーを蓄え、二酸化炭素排出量を70%削減する仕組み

stock.adobe.com

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世界最大の砂電池には、乾電池のような銅色の電極はない。見た目も、いわゆる電池らしくはない。だが、100メガワット時のエネルギーを蓄え、1メガワットの出力を安定して供給し、フィンランドのある地方の町の炭素排出量を70%削減した。年間の二酸化炭素排出削減量は160トンに上る。しかも、この設備はまもなく「世界最大」の座を明け渡す見通しだ。これを手がけた企業が、その2倍の規模の新たな砂電池を建設しているためである。(訳注:ここでは便宜上「電池」と呼ばれているが、正確には「電気で熱を作って蓄え、熱のまま[または電気に戻して]使う装置」である)。

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では、どのような仕組みなのか。

「電気で空気を熱し、その熱を砂に蓄え、熱交換器を通して取り出します」と、この施設を運営するLoviisan Lämpö(ロヴィーサン・ランポ)の取締役会長、サウリ・オンティラは筆者に語った。「仕組み自体はとてもシンプルです。要となるのは、熱をどう集中させ、砂の中にとどめるかです」。

この仕組みはフィンランドに非常によく合っている。東欧の一部の国々と同様、フィンランドでは冬季の暖房が地域で一括生成され、各家庭や施設に配給される「地域暖房」方式が一般的だからだ。砂電池が設置されたPornainen(ポルナイネン)でそれまで使っていたのは、木質チップ燃焼設備だった。これは今も予備用として現地に残され、ときどき使われている。ただ、砂電池には、満充填なら、その後にエネルギーを追加しなくても地域全体をおよそ1週間暖められるだけの蓄熱量がある。

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そのため、この地域では、エネルギーを買う時期を調整できる。とくに、風力発電所や太陽光発電所の電力を、価格が安いタイミングに合わせて買えるようになり、コストをさらに下げられる。再生可能エネルギーの発電量が送電網の処理能力を上回ると、価格が実質的にマイナス圏に近づくこともある。電気を使って蓄える側に、かえって対価が支払われる場合もあるわけだ。

また、熱ではなく電気が必要なら、熱交換器の代わりに発電機を出力側につなげればよい。そうすれば、温水や過熱蒸気ではなく、電気を取り出せる。

往復効率(投入したエネルギーに対して取り出せるエネルギーの割合)はおよそ83~85%で、この砂電池が主に置き換えている木質チップボイラーと比べても十分に見劣りしない。従来の設備は、暖房需要が大きい時期にフル稼働していれば80~90%の効率で動くが、その時期を外れると50~60%まで落ちる。一方、砂電池は年間を通じて83~85%の効率を維持する。

この小さな地域での切り替えにより、毎年14ヘクタール分の森林を守れると、この電池を設計・建設したPolar Night(ポーラー・ナイト)は述べている。

だが、世界最大の砂電池がその称号を保てるのは、もう長くはない。

Polar Nightは、フィンランドのVaaksy(ヴァークシー)で、容量250メガワット時の新たな設備を建設しており、2メガワットの出力を安定して供給する見通しである。この、より新しく、より大規模な電池で使う砂は2400トンと、増加幅はわずかにとどまる。砂電池は、大型化するほど効率が高まる設計になっているためだ。次に世界最大となるこの砂電池は、すでに建設中で、2027年夏の完成が予定されている。

こうした熱貯蔵設備にとって、都市部や農村部での利用は大きな成長機会である。だが、同じくらい重要になりうる市場が、もう1つある。

Polar Nightによれば、世界の産業用プロセス熱需要の約36%は、砂電池が供給できる80~400℃の温度帯に収まる。つまり、熱風や温水、過熱蒸気を取り出せるということだ。さらに、蓄えた熱を再び電気に変える仕様も可能で、現在試験が進んでいる。産業用の熱は、世界の排出量の大きな発生源の1つである。Polar Night Energy(ポーラー・ナイト・エナジー)がこの市場を大規模に開拓できれば、産業経済の脱炭素化を後押しする可能性がある。

現時点では、Polar Nightは家庭向けの熱と電力のコストを大きく下げていると、同社のコミュニケーションマネジャーであるミーカ・ペルトラは述べている。近い将来には、産業の生産コストもそうなるかもしれない。

(forbes.com 原文)

翻訳=酒匂寛

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