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2026.04.20 12:00

a16z、過去最大の2.4兆円でAIと暗号資産に賭ける──ホロウィッツが語る「競争ルールの崩壊」

ベン・ホロウィッツ(Travis P Ball/Getty Images for SXSW)

ベン・ホロウィッツ(Travis P Ball/Getty Images for SXSW)

この10年、ソフトウエア企業の競争優位性を支えてきたルールは、わずか18カ月ほどで崩れた。

アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)共同創業者のベン・ホロウィッツは、幅広い内容に及ぶインタビューの中で、AIが従来のソフトウエアの競争優位性を壊し、製品ライフサイクルを数年単位から数週間単位へと縮める一方、本人確認を巡る危機も深刻化させたため、ブロックチェーン基盤が構造的に欠かせないものになりかねないと論じた。

その影響は、公開市場、未上場企業の評価額、そして昨年北米のスタートアップに流れ込んだ2800億ドル(約44.5兆円。1ドル=159円換算)にとって深刻であり、まもなく表面化する。

AIインフラに約2703億円、残りはどこへ──約2.4兆円調達の配分

2026年1月、a16zは総額150億ドル(約2.4兆円)の新規ファンドの募集を完了した。過去最大の調達額であり、このうち17億ドル(約2703億円)はAIインフラ向け、30億ドル(約4770億円)は追加のベンチャー投資戦略向けである。この資金調達は、2025年に北米のスタートアップが前年比46%増の2800億ドル(約44.5兆円)を調達し、その大半がAIに向かったという状況(Crunchbaseによる)を背景に実現した。

ホロウィッツは、このファンドの考え方を率直にこう述べた。「私たちの使命は、今後100年の技術競争で米国が勝つようにすることです。それは、未来の重要なアーキテクチャであるAIと暗号資産で勝つことから始まります」。この2つを並べるのは、単なるレトリックではない。

10年を支えてきたルールが、なぜ18カ月で消えたのか

この20年、企業向けソフトウエアは2つの確かな前提の上に成り立ってきた。第1に、資金を積めば後発でも簡単に追いつけるわけではないということだ。遅れているプロジェクトにエンジニアを足せば、かえってさらに遅れる。この原則は、フレデリック・ブルックスが『人月の神話』で取りまとめて以来、よく知られている。

第2に、データの囲い込み、使い慣れた画面、移行の手間が、長く続く競争優位性を生んでいた。ホロウィッツの見方では、その2つは実質的に消えた。十分なGPUへのアクセスと独自の学習データがあれば、資金力のある挑戦者は、ほぼどんなソフトウエア製品でも短期間で再現できる。AIエージェントは画面を操作し、データを移し替える。その速さは、既存企業が頼みにしてきた乗り換えコストを消し去ってしまう。かつて新規参入者に3年かかっていたことが、今では3カ月以内、あるいはそれ以下で済む。

その結果、製品の寿命は縮み、公開市場はそれをどう評価に織り込むかで苦しんでいる。ホロウィッツはこれを「Saaspocalypse」(「SaaSの黙示録」を表す造語)と呼び、ソフトウエア企業の評価倍率に織り込まれてきた「長く稼ぎ続けられる」という前提が下方修正されていると説明した。

従来なら5年から10年は競争優位が続くと見られていた製品が、今では5週間しか持たないかもしれない。創業者にとって合理的な対応は、上場を急がず未上場のままでいることだ。未上場企業であれば、四半期決算のたびに市場から即座に評価を下されずに、方向転換し、コストを削減し、AI戦略を組み替えられるからである。

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翻訳=酒匂寛

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