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2026.04.20 12:00

a16z、過去最大の2.4兆円でAIと暗号資産に賭ける──ホロウィッツが語る「競争ルールの崩壊」

ベン・ホロウィッツ(Travis P Ball/Getty Images for SXSW)

本当のボトルネックは、コードではなく電力と“変圧器”

AIの拡張は、ソフトウエアでは解決できない物理的な限界に突き当たっている。希土類鉱物(レアアース)、メモリーチップ、そして何より電力が足りない。米国の送電網は、システムが整備された当時から基本設計がほとんど変わっていない電力用変圧器に依存している。

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AIの計算需要を支えるために、そのインフラを作り直すのは1年で済む話ではない。米エネルギー省は、データセンターの電力需要が2030年までに倍増する可能性があると予測しているが、その主因はAI関連の処理負荷だ。

a16zのインフラファンドは、まさにこの不足に賭けるものだ。同社はAIインフラを広く捉え、基盤モデル、ネットワークの安全対策、そして消費者ではなく技術部門の買い手を狙うアプリケーションまで含めている。

AIが壊した「本人確認」──なぜ解決策は暗号資産なのか

ホロウィッツの議論の中で、最も直感に反する部分こそ、投資家にとって最も重要かもしれない。彼は、AI生成コンテンツ、ディープフェイク、極度に個別最適化されたスパムの氾濫によって、従来のデジタル上のやり取りは構造的に信頼できないものになったと主張する。

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最近のインタビューでホロウィッツは、米国のコロナ禍の給付プログラムで推計4500億ドル(約71.6兆円)が詐欺師に奪われたことを引き合いに出し、大規模に本人確認が機能しなくなったときに何が起きるかを示す1つの基準だと述べた。彼の考えでは、解決策はグーグルや米政府が運営する新たな中央集権型のデータベースではない。必要なのは、どこか1つの機関を信頼しなくても成り立つ、「数学とゲーム理論に基づく性質」を備えた暗号学的な検証である。

この収れん論のもう1つの柱は、AIが経済的な当事者として動けるかどうかだ。AIエージェントが自律的な行為者として機能するには、専用の取引基盤が必要になる。クレジットカードには人間の承認が要る。銀行口座には法人格が要る。

これに対し、暗号資産、特にステーブルコインや、パブリックブロックチェーン上で保有者がそのまま権利を持つ資産は、AIが報酬を受け取り、サービスの対価を支払い、1つ1つの段階で人間の承認を得なくても経済活動を行うためのインフラを提供する。

コロンビア・ビジネススクールの研究者は、ホロウィッツの立場を次のように要約している。AIエージェントが物を購入したり真正性を証明したりする必要がある世界では、ブロックチェーンは従来の金融システムにはない道具を提供する、ということだ。

ホロウィッツの楽観論──AnthropicのアモデイやAIの父ヒントンと何が違うのか

雇用の代替について、ホロウィッツはどちらの方向にも自信満々の予測を示すことに懐疑的である。2026年2月のインタビューで彼は、大量失業の予測を支える前提、すなわち将来の仕事の種類を今の仕事から予測できるという考えには、歴史的な裏付けがないと述べた。彼は農業を例に挙げた。農業では、仕事のほとんどが最終的には自動化されたが、人々は農業経済の内側にいた時点では到底予想できなかった役割へと移っていった。彼はこう語っている。「AIがこれから生み出す仕事を、今この場ですべて想像できる可能性は低いと思います」。この立場は、AnthropicのCEOであるダリオ・アモデイや、AIの父の1人とされる計算機科学者ジェフリー・ヒントンらが大きな雇用代替を警告している議論の中では、より楽観寄りに位置する。

ホロウィッツの見立てでは、何かを作るための資本面と技術面の壁が下がることで、新製品に挑める人は、アイデアを持つすべての人に広がる。制約は、資本やコードへのアクセスから、判断の質へと移る。それがホロウィッツの言う豊かさを生むのか、それとも批判者が言うように価値をインフラ層に集中させるのかは、いま動いている数十億ドル(数千億円)規模のファンドが、どの賭けで正しかったことになるかにかかっている。

SaaSの堀、物理インフラ、暗号資産──3つの賭けは1つの構造を成す

ホロウィッツの枠組みからは、3つの実践的な結論が導き出される。

第1に、従来型SaaSの創業者は、競争優位をどう守るのかという問いに対し、乗り換えコストやデータの囲い込みに依存しない説得力ある答えを用意する必要がある。いずれももはや有効ではないからだ。

第2に、電力、チップ、メモリー、そして物理的製造能力への基盤投資は、もはやニッチな投資命題ではなく、AIの波が続くことに賭ける上で中核をなす。

そして第3に、AIと暗号資産の収斂はもはや夢物語ではない。米国でステーブルコイン関連法制の整備が進む中、AIネイティブな金融基盤の裏側の仕組みがリアルタイムで構築されつつある。

これら3つを別々のセクターへの賭けとして扱う投資家は、ホロウィッツが描く移行期において、それらがいかに密接に結びついているかを読み違えているかもしれない。

(forbes.com 原文)

翻訳=酒匂寛

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