10月20日、エコノミスト誌主催の金融カンファレンス「Buttonwood conference」に、ウォールストリートとシリコンバレーの大物らが集合した。そこで話し合われたのは、フィンテックが銀行業界に与える破壊的インパクトと、その未来について。ここでは前回に引き続き、「フィンテックはホットだが、銀行を侮るべきではない」という議論の後編をお送りする。
ウォールストリートがシリコンバレーに対抗していく上で決して無視できない課題が、人材不足だ。エコノミスト誌でグローバルエコノミストを務めるJoseph Lakeの調査によると、銀行が人材確保に苦戦している一方で、フィンテックのスタートアップには、銀行から逃れようとする人々の履歴書が洪水のように届いているという。
Lakeがモデレーターを務めたパネルディスカッションに登壇したウェルズ・ファーゴのEllisと、チェースでデジタル部門の責任者を務めるGavin Michael、HP Enterprise ServicesでEVPを務めるMike Nefkens、Orchardの共同創業者のDavid Snitkofは皆この点について強く頷いた。
フィンテック企業の9割は5年で死亡する
フィンテックの将来性の高さと、既存の銀行の力の評価について最もバランスのとれた見解を示したのは、Sequoia CapitalのパートナーであるPat Gradyだろう。朝のセッションに登壇したGradyは、フィンテック企業が銀行からシェアを奪うチャンスの大きさを指摘した。
「フィンテックは、野球で言えば2イニング目に入ったところだ。銀行の上位30行の時価総額の合計が約2兆ドル(約240兆円)あるのに対して、フィンテック企業を全て足してもまだ1,000億ドル(約12兆円)だ。つまり、フィンテックが業界にもたらしたインパクトは、まだ5%程度に過ぎない」とGradyは述べた。
彼はさらに、比較対象としてアマゾンの事例を挙げた。アマゾンはウォルマートに挑戦し、今では時価総額がウォルマートの1,880億ドル(約22兆5,600億円)を凌ぐ2,600億ドル(約31兆2,000億円)にも達する。
Gradyは、フィンテックの伸びしろの大きさを指摘した一方で、2020年までにはフィンテック企業の多くは消滅しているとも述べた。
「5,000から6,000社あると言われるフィンテック企業の90%は、今後5年でいなくなるだろう」と彼は言う。
「動きの遅い巨大な恐竜が、賢くて機敏なスタートアップに撃退されるという、破壊的イノベーションにありがちなストーリーは、金融サービスの世界では成り立たない。確かに、規制が足かせとなって銀行の動きが遅くなっているが、銀行をあなどってはいけない。彼らは非常にスマートだ。それに、JPモルガンなどは、2万人以上のデベロッパーを抱えている。これは、世界のどのテクノロジー企業よりも多い。だからこそ、私は、他のスタートアップに比べて、フィンテックの死亡率は高いと考えるのだ」
フィンテックは巨大銀行を殺すのか? 徹底討論 [Part 1/2]