バイクバッグさえ専用品だ。この自転車は、ビーチサンダルを履いて近所の農産物特売所へ向かってペダルを漕ぐような人のために設計されたものではない。
しかし、驚くような価格も重要な要素の1つだ。この自転車を製造するファクターは、ブガッティ・ファクター・ワンに2万3599ドル(約380万円)という価格を付けている。これは標準モデルである「Factor ONE(ファクター・ワン)」完成車の2倍近く、新車の自動車が買える金額だ。もちろん、概してブガッティの顧客は、数百万円もする自転車に顔色を変えるような人々ではない。彼らは「物」と同じくらい、その「概念」、つまり究極的な高性能、最高級の素材、シリアルナンバーが付けられた限定性、などに対してお金を払うのだ。
その魅力は理解できる。筆者は数年前、ブガッティのハイパーカー「ヴェイロン グランドスポーツ ヴィテッセ」を運転したことがあった。猛烈に速くて驚くほど高価な(2012年当時の日本価格は2億3000万円)そのマシンは、自動車というよりも、革張りのシートを備えた200本のダイナマイトのようなものだった。
ブガッティが他の誰よりも巧みに売っているものは、単なる「移動手段」ではなく「劇場」である。ブガッティの名を冠する自転車も同じ文法に従っている。すなわち、過剰な思考、過剰な製造品質、そして法外な価格の、ほぼ間違いなく無用な代物。
しかし、ブガッティ流に言えば、それこそがまさに、人々が欲しがる理由なのだ。
「このプロジェクトは私たちにとって、あらゆる前提を再考し、エンジニアリングの限界を押し広げる挑戦でした。それはまさに、ブガッティが自動車の世界で1世紀以上にわたりやってきたことです」と、ファクター・バイクス創業者のロブ・ギテリスは声明で語っている。


