現在発売中のForbes JAPAN 4月24日発売号では、「カルチャープレナー特別版「『源流経営』最前線」を掲載。文化や素材の“源流”に遡ることで、新たな価値と市場を生み出そうとするカルチャープレナーたちを紹介する。
Matchaブームを一時の熱狂で終わらせないために、日本は今何ができるか。「日本の国益を守る前に、世界の抹茶の需要を守ることが先決」。急拡大する需要のなかで、世界を知るTeaRoom岩本涼が今考えていることとは。
海外で突如として起こった抹茶ブーム。世界的な抹茶の需要急増で、2025年の緑茶輸出額は約721億円にのぼった。過去最高だった前年の約2倍だ。主な需要は、カフェでの抹茶ラテ。アメリカのカフェ人気に火がつき、SNSを介して世界的なブームとなっている。
なぜアメリカでMatchaは流行ったのか。その要因を、コロナ後のインフレとライフスタイルの変化によるカフェの総需要増加と分析している。インフレによりレストラン価格が高騰。高すぎるチップに対する批判も増え、レストランの代わりにカフェの需要が増えた。同時にリモートワークが可能となり、自宅でなくカフェで仕事をするライフスタイルも定着。長時間のカフェ滞在で飲み続けたとき、緑色でいちばんヘルシーに見えるドリンクとしてMatchaが消費者に受け入れられたのだ。
日本産抹茶の需要が急速に伸びたのは2024年の夏。翌年5月には本格化した。京都府茶業会議所によれば、全農京都茶市場における抹茶の原料「てん茶」の一番茶(その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶)の25年の平均取引価格は、前年比で約269%上昇した。
その結果、抹茶生産者や彼らと密に連携する卸売り業者には大きな利益がもたらされた。過去数十年間、衰退し続ける茶業のなかで、工夫を重ねてきた生産者が報われた。これは素晴らしいことである一方、「一過性のトレンド」の傾向が強い動きだ。茶業界として、世界の抹茶需要を持続させる仕組みをもたなければ、この需要はほかの産業・産品に代替され、ブームはブームのまま消えていくだろう。
このまま抹茶の価格が上がり続ければ、カフェでのラテ需要は、原価率の観点から原料としての使用が難しくなる。カフェが抹茶を取り扱わないと判断したとき、世界的な需要は消え、ブームは終わる。
そうしないために、抹茶の生産国であり、抹茶文化の源流「茶の湯」を擁する日本はどう考え、動くべきか。私は、今は日本の国益を守る前に、世界の抹茶の需要を守ることが先決だと考えている。私たちが日本産の抹茶を卸しているほぼすべてのカフェが、すでに中国産抹茶を検討し始めている。日本産だからといって必ず高値で売れるわけではない。世界的な需要超過に対して、抹茶がグローバル産品となり、中国に限らず、世界各地で抹茶の生産が始まることは当然だ。「量産品としての抹茶」の量では勝負できない日本の茶業界は、質を追求した「高付加価値な抹茶」で勝つしかない。



