現在発売中のForbes JAPAN 4月24日発売号は「THE LEADERSHIP AI時代のリーダーシップ」特集。2022年のChatGPT登場以降、日本でも「AX」が経営課題の中心に躍り出た。自ら思考し、タスクを完遂する「AIエージェント」や、人型ロボットや高度な自動化技術といったフィジカルAIたちが、さまざまな組織に新たなアクターとして加わっている。こうした時代の転換点において、リーダーはAIを効率化のための道具にとどめず、新たな事業創出のためのパートナーととらえ、戦略的に使いこなすことが求められている。AIと人間が仲間として共に働く未来において、組織におけるリーダーシップはどう変化するのか。本特集では、多様なアプローチで未踏の時代を切り拓く新しいリーダーたちの言葉から、「AI時代のリーダー像」を探る。
OpenAIのCEOとして、この40歳の億万長者はChatGPTを世に放ち、人工知能を一般に普及させ、企業価値5000億ドルの巨大企業を築き上げている。新米の父親でもある彼は、AIの未来をどう考えるのか。米フォーブス2026年2月の記事をもとにお届けする。
サンフランシスコのOpenAI本社。サム・アルトマンのオフィスに置かれたデスクには、彼が長年収集してきたテクノロジー史にまつわる品々が並べられている。なかでもひときわ目を引くのが、ずんぐりと立つ黒檀色のウランの棒だ。心配するようなものではない、とアルトマンは言う。「これは分裂しない劣化ウランだから」とウラン238の棒についてさらりと語るが、ウランは核エネルギーの生成に使われる元素だ。「この棒に害はないよ」。彼はガイガーカウンターをかざし、自分の言葉を証明してみせる。「人類は物理の世界で大きな発見をし……それによって事実上無限のエネルギーを手に入れた」と彼は語る。「こんなものの存在を知りもしなかった人類が、やがてその可能性を理論化した。そのわずか20年ほど後には原子爆弾をつくっていた。信じられない早さだ」。
レゴ社とコラボしたアディダスのスニーカー「ウルトラブースト」を履き、シンプルなグレーのニットセーターを着たアルトマンは、収集品を几帳面に年代順に説明していく。ほとんどはふだん自宅のオフィスに置かれており、親しい友人以外の目に触れることはないという。この日並べられたのは、アルトマンいわく4万年前の石斧(「石器時代の驚くほど万能なツール」)、3500年前の青銅の剣(「テクノロジーが地政学に大きなインパクトを与えた興味深い例」)、そして超音速による空の旅を目指した旅客機「コンコルド」のジェットエンジンから取り出されたブレード(持ち運ぶのに「ちょうどいい大きさだった唯一のパーツ」)だ。彼は学芸員泣かせの無頓着さで、それぞれのアイテムをバスタオルにくるみ、ダッフルバッグに詰め込んでオフィスにもってきていた。
「それぞれの世代で新たな足場が積み上げられていくさまには、いつも驚かされる」と、アルトマンは技術の進歩について語る。「その光景を、まさに今私たちは目の当たりにしている」
ウランの棒と並び、コレクションのなかでひときわ印象的なのが古いGPUチップだ。OpenAIの看板製品であるChatGPTを動かす大規模言語モデルの初期バージョンを訓練するために使われたチップである。2022年11月にリリースされたChatGPTはAIを一気にメインストリームへと押し上げ、産業革命に匹敵しうるイノベーションの連鎖に火をつけた。
アルトマンのビジョンは、消費者向けの製品を磨き上げることではない──ほどなく経済全体が依存することになるかもしれない基盤システムを構築することにある。今やChatGPTの週間アクティブユーザーは8億人を超えている。OpenAIは2025年に130億ドル超を売り上げ、最近では5000億ドルの評価額がついた(アルトマン自身は同社の株式をもっていないが、他企業への投資によって資産は推定30億ドルとされている)。現在、同社は評価額7500億ドル以上となるメガラウンドでさらに1000億ドルの追加調達を協議中である(注・26年4月時点で、予想を超える1220億ドルで調達完了)。OpenAIに触発された大手テック企業は、今年AIデータセンターとチップにおよそ5000億ドルを投入する可能性があるといわれている。今この瞬間、OpenAIは世界で最も重要な企業と言えるかもしれない。



