投資分野で表した才覚
2015年、29歳でYコンビネーター(以下YC)の代表に就いたばかりのアルトマンを、米フォーブスは「30 UNDER 30(世界を変える30歳未満)」に新設したベンチャーキャピタル部門に選んでいる。「世界の問題を洗い出して、それを解決する企業に出資していけるのはクールだよね」と、当時の彼は米フォーブスに語っている。
そうした投資という点のみから見れば、アルトマンは大いに野心的なビジネスリーダーであり、未来に対するビジョンを緻密に設計している。スマートフォンの時代が揺るぎないものとなった2010年代、彼は先見の明をもって数々の企業に支援を行った──例えば、まだ社名すらなかった決済大手ストライプ社に1万5000ドルを出資して株式の2%を取得し、2014年には掲示板サイト「レディット」への5000万ドルの資金調達ラウンドを主導した──これらの企業はやがてアプリ経済の中心的存在となっていく。
それと同じような先見的投資を、AIの分野でも行っている。自社のOpenAIはもちろんだが、核融合エネルギーのほぼ無尽蔵な力の活用を目指すヘリオン社や、従来型の核分裂炉を小型のモジュール式にして開発するオクロ社にも出資している。どちらもAIの膨大なエネルギー需要に応えうる企業である。さらには、AIディープフェイクがまん延し始めた世界において「人間であることを証明」する技術を開発するワールド社(旧ワールドコイン)、脳と機械をつなぐニューラル・コンピューティングを手がける新興企業マージ・ラボへの出資もある。加えて、オープンリサーチという非営利団体を通じてアメリカ最大級のユニバーサル・ベーシック・インカム実験も支援している。
「自分は複数の物事の行く末を──数年先、あるいは数十年先を──見通し、それらが互いにどう影響し合うのかを理解することが並外れて得意なんだと思う」と彼は言う。次に何が来るかを予測するのが得意な人はいる。そして異なる世界がいかにして重なっていくかを見抜ける人もいる。「でも、その両方をできるのが自分の持ち味だろうね」
最近アルトマンは、AIの可能性と危険性を見通すための新たなレンズを得た──父親になったのだ。彼と同性婚の夫には息子がおり、2026年には2人目も迎え入れる予定となっている。
「『君に子どもができて良かったよ、これで世界を破滅に導くようなことはしないだろうからね』、なんて言われるんだ」とアルトマンは語る。「もともと、そんなつもりはさらさらなかったのに。子どもがいなくたってね」。(続きは4月24日発売「Forbes JAPAN 2026年6月号」でご覧ください。)
サム・アルトマン◎1985年生まれ。ミズーリ州セントルイス出身。2005年にスタンフォード大学を中退し、Looptを創業、12年に売却。14年~19年までYコンビネーターのパートナー、代表として数々の大型投資を行う。19年OpenAIのCEOに。資産額は30億ドルを超えるが、同社の株式は保有していない。資産はStripe、Redditなどへの投資から成る。


