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2026.04.16 13:49

AIエージェントの「身分証明書」としてのWeb3ドメイン

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マッティア・マルトーネはFreenameのCOO兼共同創業者である。

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人工知能(AI)は、人間の仕事を補助する段階から、人間に代わって能動的に意思決定を行う段階へと進化しつつある。これを可能にしているのがエージェント型AI(Agentic AI)だ。人間のユーザーや組織に代わって行動し、判断し、交渉し、取引を行い、タスクを実行する自律型エージェントである。

エージェント型AIは現時点ではパイロット段階にあるが、Gartnerによれば、2028年までにエンタープライズアプリケーションの33%がこれを組み込む可能性があるという。Web2とWeb3の進化に深く関わってきた者として、私はこの移行を、デジタルアイデンティティの仕組みが根本から変わる転換点だと捉えている。

同時に、パズルの重要なピースがまだ十分な注目を集めていないと感じている。それが「アイデンティティ」だ。エージェント型AIの可能性は、何ができるかだけでなく、誰を代表しているのか、どのように検証されるのか、そして他のシステムやエージェントをどのように認識するのかにかかっている。

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私は、Web3ドメインがその答えの一部になり得ると考えている。暗号技術で固定され、人間が読める形式のハンドルとして、ウォレット、認証情報、プロフィールを紐づけることができるからだ。しかしまず、現行の識別子やWeb3ドメイン自体が抱える課題を見ていこう。

IAMとウォレットアドレスの問題点

過去10年ほど、従来のアイデンティティ・アクセス管理(IAM)は、コンピュータプログラムやボットがシステムやデータにアクセスするのを防ぐために設計されてきた(それには正当な理由がある)。しかし状況は変わりつつある。企業は特定のアクションを実行するためにAIエージェントを活用し始めており、それにはデータやシステムへの直接アクセスが必要になる場合がある。アイデンティティは極めて重要な問題となる。

Web3の領域とその識別子にも、相応の課題がある。ウォレットアドレスを例に取ろう。通常、これらは長い英数字の文字列であり、人間が暗記するには複雑すぎる。しかし、これらのウォレットアドレスはエージェント型AIにとっても問題となり得る。

第一に、ウォレットは異なるチェーン上に存在する可能性がある。第二に、ウォレットアドレスは変更される可能性がある(例えば、鍵のローテーションが発生した場合)。エージェントには、時間の経過やチェーンをまたいでも持続する識別子が必要だ。既存のアイデンティティシステムは一般的にプラットフォーム固有であり、相互運用性が限られている。

さらにセキュリティリスクもある。ウォレットアドレスだけを持つエージェントは、なりすまし、フィッシング/署名攻撃、あるいは悪用に対して脆弱になり得る。

アイデンティティの基盤としてのドメイン

私は、Web3ドメインがエージェント型AIシステムにおけるアイデンティティの基盤として有力な候補になると考えている。ブロックチェーン上で発行されながら、私たちが数十年にわたって使用してきたWeb2のドメイン名と同じ形式を持っている。

発行または登録(プロトコルによる)されると、Web3ドメインは恒久的にオンチェーンで所有される。Web2ドメインとは異なり、中間のレジストラへの依存度が低いため、所有権の移転はそう簡単ではない場合がある。また(設計にもよるが)容易に変更されたり差し押さえられたりしない。

この永続性自体が大きな利点だ。加えて、ドメイン名は人間が読める形式でもある。長い英数字の文字列よりも、「alice.defi」のようなドメインの方がはるかに覚えやすい。

では、ドメイン名はエージェント型AIにおいて具体的にどのように機能するのか。ここでも鍵になるのは、説明責任と追跡可能性である。エージェント型AIシステムは文脈を理解し、先回りして行動する。責任あるアクションを実行するには、その行為がユーザーへと遡って追跡できなければならない。

Web3ドメインは、ウォレットアドレス(正引き)、リバースレコード(プロフィール)、メタデータ、場合によってはオフチェーンのアイデンティティや認証属性にまでマッピングできる。つまり、エージェントのドメインはプロフィールとアイデンティティの束として使用できる。ドメインの所有権と取引はオンチェーン(または少なくとも検証可能)であるため、ドメインに紐づいたエージェントの行動は追跡、監査が可能であり、必要に応じて取り消しや責任追及もできる。

ユースケース

これらのWeb3ドメイン名は、エージェント間通信においても有用だ。より多くのユーザーや企業がエージェント型AIを採用するにつれ、エージェント間通信が将来のインターネット通信の主流になると私は考えている。

全体として、エージェント型AIとドメインは組み合わさることで、幅広い実世界のユースケースを実現できる。例えば、AIショッピングエージェントは、あなたのドメインを識別子として使用しながら、決済認証情報を管理し、アイデンティティに紐づいたロイヤルティ割引を適用して、あなたに代わって食料品や衣類を注文できる。

金融分野では、エージェントが取引を執行したりポートフォリオを管理したりでき、ドメインが透明性と説明責任を担保する。例えば、特定のエージェントが特定のユーザーに代わって行動したことをログに記録するといった具合だ。

企業内でも、調達、スケジュール管理、法務、レポート作成などのタスクにAIエージェントを導入でき、ドメインが信頼性の高い識別子として機能することで、行動のログ記録や権限管理を明確に行える。

AIエージェントのDNSとしてのドメイン

エージェント型AIのエコシステムにおいて、ドメインはエージェントがプラットフォームやブロックチェーンをまたいで互いを発見し、検証するのに役立つ。Web3ドメインは、AIエージェントにとっての一種の「DNS」として機能し得る。

エージェントのドメインを使用することで、別のエージェントや人間は、そのエージェントのアイデンティティ、機能、権限などの重要なメタデータを解決できる。DNSが人間が読める名前をIPアドレスにマッピングするのと同様に、Web3ドメインはエージェントのエンドポイント/ウォレット/プロフィールにマッピングする。

現時点ではエージェント間通信の標準化された方法は存在しない。しかし、こうした標準が整備されれば、ドメインがその標準に従い、異なるブロックチェーン間でエージェントを検証できるようになると私は見ている。

策定が進む標準の1つが、エージェント通信プロトコル(ACP)と呼ばれるものだ。Web3ドメインの採用が進むなか、プロバイダーはAIエージェントのアイデンティティ専用のトップレベルドメイン(TLD)を提供し始めている。(透明性のために明記すると、私の会社はカスタムTLDを提供している。)

エージェント型インターネットへの備え

Web3ドメインは完全なソリューションではないことを念頭に置いてほしい。採用はまだ初期段階であり、エコシステムの足並みがそろうかどうかに左右される。既存のアイデンティティシステムとの相互運用性が不可欠であるため、現行のインフラを置き換えるのではなく統合することを目指すべきだ。ガバナンスの問題も残っており、ドメインが既存のアイデンティティフレームワークの上に人間が読めるレイヤーとして機能するハイブリッドアプローチが登場すると私は予測している。

標準化と採用拡大を見据えると、今こそ企業の経営層が実験を始めるべき時だと私は考える。まずは自律型エージェントに任せられる定型業務を特定し、それらのシステムがどのようにあなたの代わりに行動できるかを探ってみてほしい。

Web2ドメインをトークン化するか、Web3ドメインを登録して、エージェントに検証可能なアイデンティティを与えてみよう。次に、それらを会社のウォレットに接続し、安全なオンチェーン操作を可能にする。これにより、エージェントがWeb2とWeb3の両方で協力し取引できる信頼性の高いアイデンティティレイヤーを構築できる。

forbes.com 原文

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