北米

2026.04.17 16:00

カリフォルニア州知事選に挑む億万長者スタイヤー、電気代25%削減の公約は実現するか

クリーンテック投資家 トム・スタイヤー(Photo by Mario Tama/Getty Images)

電気料金を押し上げる最大の要因は配電コスト──山火事対策が大きな負担に

スタイヤーの提案の恩恵を最も受けるのは、パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック(PG&E)のような民間電力会社の利用者になりそうだ。こうした電力会社は、自治体が運営する電力会社より料金が高い傾向がある。彼の提案は、カリフォルニア州が掲げる「2045年までに電力の100%を非炭素電源でまかなう」という目標の前倒し達成を後押しする可能性もある。現在、同州の電力のおよそ3分の2はクリーン電源で賄われている。だが、カリフォルニア州の電気料金が全米平均より高いのは、発電コストや送電コストが原因ではないため、州全体でみれば、スタイヤーが期待するほど大きな効果は出にくいと、カリフォルニア大学バークレー校エネルギー研究所のセヴェリン・ボーレンスタインは指摘する。

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ボーレンスタインは、「発電と送電のコストは、請求額全体の中では一般に小さな割合しか占めておらず、全米の他地域と比べてもおおむね同程度だ」と語る。彼は、「請求額の中で最も大きいのは配電コストだ。このコストは過去10年で急騰したが、主な理由は山火事の防止に向けた投資と、山火事に伴う費用の支払いにある」と説明した。

PG&E、複数の山火事をめぐり約2.1兆円の和解金の負担を迫られる

とりわけその傾向が強いのが、サンフランシスコを拠点とするスタイヤーが利用する電力会社PG&Eだ。同社は、自社の送電網に起因するとされる過去の複数の山火事を巡り、総額135億ドル(約2.1兆円)の和解金負担を迫られている。同社は送電線の更新にも巨額の資金を投じており、多くの送電線を地下に埋設している。こうした対策はシステムの安全性を高める一方で、コストは極めて高い。州全体で見ると、電力会社各社は設備更新に約300億ドル(約4.8兆円)を投じており、その負担は電気料金として利用者に転嫁されている。

しかも、問題は配電コストだけではない。州の電力会社は、屋根置き型の太陽光発電設備を持つ利用者が供給する電力を手厚い価格で買い取っているほか、省エネ施策の費用負担も義務づけられている。そのうえに、研究開発プログラムの費用や、低所得者層の電気料金負担を支えるための支援策も上乗せされている。

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ボーレンスタインは、「低所得者向け支援にかかる費用は、ほかの利用者の電気料金に上乗せする形で賄われている」と語る。「メディケイドの費用を、ほかのすべての人の医療費を引き上げて賄うことはない。フードスタンプの費用を、ほかのすべての人の食料品価格を引き上げて賄うこともない。こうした制度の費用は一般会計から出すのが普通だ。ところが電気料金では、そうした費用まで料金に上乗せして賄っている。それは、議員が費用を別の予算に載せたがるからだと思う」と彼は続けた。

電力の供給を増やす手段として、マイクログリッドと大規模太陽光発電所が検討される

スタイヤーが看板政策の1つに掲げるマイクログリッドについて、ボーレンスタインは、「電力の消費地に近い場所で再生可能エネルギーを増やせる利点はあるものの、供給力を増やす手段として常に最も安価とは限らない」と指摘する。電力会社は、その代わりに発電能力がはるかに大きく、比較的低コストな大規模太陽光発電所を、砂漠地帯や休耕地に建設する方向に傾いている。

「マイクログリッドには、人が暮らす場所に近く、送電インフラをそれほど必要としないという利点があるものの、規模の経済は働かない。たとえ大型倉庫の屋上いっぱいに太陽光パネルを設置しても、発電規模は通常1メガワット程度だが、送電網に接続する大規模太陽光発電所なら500メガワット級も十分に可能だ」とボーレンスタインは説明した。

その一例が、今後2年以内の着工を目指す「Valley Clean Energy Infrastructure Plan」と呼ばれるプロジェクトだ。カリフォルニア州セントラルバレーの休耕地約5億5000万平方メートルに、それぞれ21ギガワット分の太陽光パネルと蓄電設備を設置するこの計画の支援者は、この計画によって1000万戸を超える住宅に電力を供給できると述べている。

一方、巨額の費用が投じられるカリフォルニア州の高速鉄道計画では、列車への電力供給にも使う予定の沿線の太陽光発電所からの余剰電力を売却して、追加収入を得る案が検討されてきた。同計画では、電力会社に路線沿いへの送電線敷設を認めることで、カリフォルニア州の送電網を強化するという、大きな収益源になり得る案も浮上している。この路線は最終的に、サンフランシスコ・ベイエリアからサンディエゴまで640キロ以上に及ぶ可能性がある。

再生可能エネルギー事業への投資を手がけるAligned Climate CapitalのCEO、ピーター・デビッドソンは、カリフォルニア州でマイクログリッドが増えれば、電力会社にかかる負担の緩和につながると語る。「マイクログリッドが最も安い選択肢ではないからといって、有効な案まで退けるべきではない。巨大な太陽光発電所の電力ほど安くはないかもしれないが、それでも供給量の大幅な上積みになる。とりわけ州のルールを見直し、電力会社にその電力の買い取りを義務づければなおさらだ」とデビッドソンは指摘した。

またデビッドソンによれば、スタイヤー、あるいはカリフォルニア州知事であれば誰でも、土地収用権を使って送電網の増強を加速できるという。「それだけでも大幅なコスト削減につながり得る」と彼は語った。

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翻訳=上田裕資

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