皮肉なことに、オルバン首相が制定した新憲法は、大勝した政党の議席数を増やす一方で敗者の議席数を最小限に抑える仕組みとなっており、結果的に自身に不利に働いた。とはいえ、16年にわたる私利私欲に満ちた統治の間に、同首相は官僚機構や経済界を自身の支持者で埋め尽くしてきた。ハンガリーは今、社会のあらゆる階層でオルバン首相の取り巻きを一掃するという、論争と分裂を招く事態に直面している。
同首相は、長年にわたる汚職疑惑に対する法的措置が待ち受けていることを承知しているはずだ。オルバン首相の支持者も、在任中の行為に対する訴追は、最終的には同首相に擁護されてきた者たちを標的にするものだと十分に理解している。司法機関からメディアや情報機関に至るまで、オルバン首相の支持者は抵抗し、妨害を試みるだろう。ハンガリーの新指導者となるマジャル党首にとって、この腐敗した体制を一掃するのは容易なことではない。
制度的に根付いた抵抗勢力との闘いは、東欧では決して目新しい話ではない。ソビエト連邦の勢力が衰えていく中で、東欧諸国ではこうした事態が何度も繰り広げられた。ルーマニアでは、独裁制を敷いていたニコラエ・チャウシェスク元大統領の失脚後、同政権時代の支配層が引退するまで数十年かかった。
一方、ジョージアでは、親欧米派のミヘイル・サアカシビリ元大統領が警察官の収賄の慣行を断ち切るため、文字通り一夜にして1万5000人の警察官を解雇した。だが、同大統領は改革を急いだ代償として、大きな犠牲を払うことになった。追放された支配層は国内の新興財閥オリガルヒの支援のほか、ロシアからの資金や闇工作に支えられ、2012年の選挙でサアカシビリ元大統領を追放した。親ロシア派が権力の座に居座り、いわゆる「ポスト自由主義」体制を築き上げた。親ロシア派は今もなお国を支配しており、2021年10月にサアカシビリ元大統領が民主主義の確立を目指して帰国して以来、同大統領を獄中に閉じ込め続けている。前回の議会選挙でロシア寄りの現政権が疑わしい勝利を収めて以来、400日以上にわたり、ジョージア国民はほぼ毎日、大規模なデモを行っている。ハンガリーにおけるマジャル党首の劇的な勝利は、ジョージア国民を勇気づけることになるだろう。
オルバン首相もマジャル党首も、東欧の情勢と、そこに潜む利害関係を熟知していることは間違いない。オルバン首相はハンガリーの復興を極めて困難なものにすることで、マジャル党首の政権が苦悩と不安に満ちたものとなるように仕向けることができる。そして、モスクワからオンライン上で絶え間なく拡散される否定的な偽情報による攻撃が、その印象を増幅させるだろう。


