誘導滑空爆弾、ウクライナ側の通称「KAB」は、ロシアの最も危険な兵器のひとつになっている。この爆弾は、防空網を回避するため前線から50kmかそこら離れたジェット機から発射され、ウクライナの都市と前線陣地の両方に甚大な被害を与えている。ウクライナ国防省の報告によると、今年1月には5700発あまり投下された。
滑空爆弾にどう対抗するかは大きな課題だ。米ランド研究所の研究者らは2024年の論考で、ジャミング(電波妨害)は可能かもしれないとの見解を示しつつ、「戦争において万能の解決策はまれだ」と付言していた。事実、ウクライナ側は同年中にジャマー(電波妨害装置)を用いて滑空爆弾を目標から逸らし、有効に対抗できるようになったものの、ロシア側による新型受信機の導入でその妨害は無効化されてしまい、再び爆撃を受けるようになった。だが、ウクライナはロシアの最先端技術を克服する改良型ジャマーを開発し、現在、その配備を進めている。
「KABの有効性はゼロにまで下がりました」。新型電子戦(EW)システム「Lima-Quant(リマ・クワント)」の開発元の広報担当者は筆者の取材にそう述べた。「前線のおよそ700kmにわたる区間に、敵は過去のある月にKABを869発投下しました。これらの攻撃の結果はといえば、軍人8名が軽傷を負っただけでした」
Lima-Quantを開発したのは、以前に「Lima」というEWシステムを手がけたのと同じ業者だ。Limaはロシアのキンジャール空中発射弾道ミサイルを逸らし、無人の平原に落とした実績もあるとされる。それを改良したLima QuantもLimaと同様、中央政府や軍組織ではなく電子戦チームの「ナイト・ウォッチ」と連携して開発された。ただ、その実戦配備に際しては、技術的な課題だけでなく政治的な課題にもぶつかることになった。
誘導爆弾の脅威
KABは、無誘導の通常航空爆弾に操舵フィンや衛星誘導システムを装着して、地図上のあらかじめ指定された地点を攻撃できるようにしたものだ。米国のJDAM(統合直接攻撃弾)のロシア版に相当する。条件が良ければ命中精度は20m以内とされ、特定の構造物に打撃を与えることが可能だ。



