経営・戦略

2026.04.15 23:43

「シンプル」という最強の武器

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いまや有名になった言葉がある。トーマス・ジェファーソン、マーク・トウェイン、T.S.エリオット、カート・ヴォネガット、ベンジャミン・フランクリンなどに帰されることもあるが、実際に最初に書いたのはフランスの哲学者ブレーズ・パスカルだった。

「短い手紙を書く時間がなかったので、長い手紙を書いた」

もしパスカルが21世紀の起業家だったなら、ロッキードのスカンクワークスで主任航空技師を務めたクラレンス・「ケリー」・ジョンソンが生み出した原則、KISSに触発されていただろう。

Keep it simple, stupid(シンプルにしろ、馬鹿者)。

ビジネスは限りなく複雑である。とりわけ、私の会社のような製造業ならなおさらだ。グローバルに展開し得るサプライチェーンがあり、多数の工程が絡み合う製造プロセスがあり、チームとその継続的なニーズがあり、人事、マーケティング、財務、流通など、挙げればきりがない。

しかも、これは今日の話にすぎない。明日になればすべてが変わる。最近のAIという新手のものについて、耳にしたことはあるだろうか。

4つの柱

企業が抱える課題が山積みの中で、どうすれば全体をまとめられるのか。答えはシンプルにすることだ。

結局のところ、成功している企業には、共通していくつかの中核原則しかない。

  • 高品質の製品をつくる、または高品質のサービスを提供する。
  • イノベーションを止めない。
  • 従業員のエンゲージメントを引き出す文化をつくる。
  • 顧客のニーズと欲求に一点集中する。

その先は、すべて細部である。細部は重要だが、この4つの必須事項なしに勝てるビジネスはない。

どのビジネスも、まずはこの4つに注ぐ集中をシンプルにしなければならない。

4つの重要概念の内側においてすら、複雑さをそぎ落とすことが決定的に重要だ。私の事業であるボートづくりでも、私たちが生み出す複雑な機械は、突き詰めればこの4つのシンプルな考え方に集約される。

私たちは職人技としての品質、そして顧客が望むライフスタイルの実現に徹底的にこだわる。次の偉大なアイデアを絶えず探し続ける。そして、世界最高のボートをつくるようチームを後押しする職場環境を整える。

あなたのビジネスも、おそらくこの点では似ているはずだ。たとえあなたが「生産」しているものがボートとは似ても似つかなくても。

ビジネスにKISSを

KISSとは、注意をそらすものを排し、プロセスを取り組みやすい仕事の単位へと蒸留することを求める。私たちは問題の表面だけを見ず、根本原因の解決に取り組む。研究は繰り返し、人は選択肢の多さに圧倒されること、そして選択肢が絞られるほどより良い判断を下せることを示してきた。業務の複雑性を下げることは、ビジネスのオペレーション効率向上につながる。

これは理屈だけの話ではない。Googleは検索体験を徹底的に合理化することで検索の世界を制した。あまりにシンプルなので、検索リクエストを最後までGoogleが補完してくれる。Amazonは顧客向けのプロセスを簡素化し、購入がワンタッチで済むところまで突き詰めてeコマースの宇宙を征服した。Nikeのマントラの1つは「simplify and go」だ。

企業はどうやってシンプルにするのか。出発点はコミュニケーションである。社内コミュニケーションのチャネル数を減らす。チームに新しい言語の習得を強いる専門用語や略語を排除する。

次にプロセスへ移る。全社データベースの数を大胆に削減する。縦割りの壁を壊し、部門をまたいで共有する。ウェブサイトを設計する際は顧客の目線で考え、UIをシンプルで直感的にする。

私たちの場合、すべての締結に同一サイズのネジを使うことを意味する。ブランドメッセージについても全員の認識をそろえる。

「Geicoなら自動車保険が15%お得に」。以上だ。

KISSの逆説

シンプルにすることは、複雑で難しい。計画や思考の必要性を最小化する仕組みをつくるには、膨大な計画と考察が求められる。

企業のリーダーシップは、シンプルさの最前線の提唱者であり実行者にならなければならない。シンプルさが適応力、顧客満足、効率を押し上げることを理解したうえで実装する必要がある。

私の会社の成功を大きく押し上げた重要なイノベーションの1つは、建造工程を早い段階で簡素化したことだった。船体(ハル)と甲板(デッキ)を別々につくり、デッキをハルに接着する代わりに、私たちは「逆さ靴箱設計」をつくり上げた。ボートを上下逆さにし、デッキとハルを一体で組み立て、ハルをデッキに接着することで工程を1つなくしたのだ。(この設計がより水密性の高いフレームを生むという点も、悪くはなかった。)

その後35年の間に他社もそのイノベーションを模倣したが、それでもなお私たちにとっての価値の差別化要因であり続けている。

私の同僚は、売上1000万ドルの組織で働いていた。そこでは、機能ごとに会計年度が4種類もあり、データベースは十数個あり、その大半は相互に連携していなかった。CFOは、数万人の従業員を抱える数十億ドル規模のグローバル企業AT&Tの出身だった。彼は、従業員40人の新しい会社のほうが、より複雑で、ある意味では機能性も低いと言った。

あなたのビジネスをどう簡素化すべきか、私には断言できない。具体的な特徴は固有のものだからだ。しかし、あなたのオペレーションのうち不必要に複雑になっている部分や、それを合理化する方法を見つけ出すのに、さほど大きな労力は要らないはずだ。

Nikeがシンプルに言うとおり、「Just do it」だ。

forbes.com 原文

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