2025年が広く「エージェントの年」と呼ばれた後、いま私たちは、企業がAIに向き合う姿勢に明確な変化が生まれているのを目の当たりにしている。Snowflake Venturesでは、この変化がスタートアップの創業者やエンタープライズ顧客との対話の随所に表れている。
AI導入をめぐる意思決定はより慎重になり、企業は「取り残される恐怖」だけを理由に最新のAIツールを買うことがなくなりつつある。代わりに、実際のビジネス課題を解決しているプロダクトを優先している。そして、そうした解決策は、設計段階からAI活用を前提とするものが増えている。
基本に立ち返る
企業は、AIのためにAIを「必要」としているわけではない。より良い意思決定、より効率的なプロセス、そして顧客成果の改善を必要としている。AIは、それらの目標を前進させる限りにおいてのみ価値がある。
こうした発想の転換は、テクノロジーの意思決定の在り方も変えつつある。最新の機能セットを追いかけるのではなく、企業はトレードオフを見極め始めている。最新のスタートアップのツールを採用するのか、それとも大手ベンダーが同様の機能を取り込むのを待つのか。自社の業界にAIがどのような影響を与えているのか。そして、その業界特有のニーズに明確に応える解決策があるのか。
Creandumのゼネラルパートナー、Carl Fritjofssonはレポート「AI Agents Mean Business」の中で次のように述べている。「近いうちに世界はAIを使った無作為なオープン探索をやめ、AIから本当のROI(投資対効果)がどこで生まれるのかを見るようになるだろう。最新技術を試すのではなく、成果と最終利益により多くの注意が向けられる」
AIエージェントへの反応は、より複雑になっている。多くの組織は、「エージェント的(agentic)」と銘打たれたものがすべて根本的に新しい何かを示すわけではないことを、早い段階で理解した。多くの場合、真の自律性と、より高度な自動化の違いを見分けるのは難しい。
Hetz VenturesのパートナーであるGuy Fighelはこう語る。「少なくとも半分のケースでは、人々がエージェントについて話しているとき、それは単に自動化とワークフローを意味しているだけだ」。2025年はエージェントの年だったが、本番環境で稼働するエンタープライズグレードのエージェントソリューションを本格的に展開する年ではなかった。
AIプロダクトはAI以上の存在であり、プロダクト以上の存在でもある
イノベーションのスピードは、AIツールの選定を難しくする。新しいモデル、フレームワーク、ポイントソリューションが絶えず登場し、企業が技術力を持続的なビジネス成果へと変換できるパートナーを見極めることをより困難にしている。
今後を見据えるなら、企業はAIツールの評価に投資家のアプローチを取り入れるのが賢明かもしれない。ベンチャーキャピタリストは常に、プロダクト機能の先を見て長期的な存続可能性を評価してきた。企業にとっても同じ視点が当てはまる。採用するプロダクトの背後にあるドメイン(業界)知見の深さを評価すべきである。おそらく長く残るのは、提供先の業界を理解している企業だ。すなわち、市場がどのように機能するかを規定するワークフロー、規制上の制約、そしてオペレーションの現実を理解している企業である。技術革新と確かなビジネス判断を組み合わせるリーダーシップチームは、意味のある差別化要因を生み出す。
Anthos Capitalの投資家であるBryan Haleはこう語る。「私たちの投資仮説は一貫して、AIをいったん脇に置き、企業がそれ以外に何をしているかを見ることだ。強いチームか。優れた洞察があるか。顧客に愛されているか。より不可欠な存在になりつつあるか」。さらに続ける。「AI企業の多くは、ほとんどのスタートアップが昔からそうであったのと同じように、当初は本当の防衛力(defensibility)がない状態で始まる。それは成長とともに時間をかけて獲得していくものだ」
多くのスタートアップは技術的に印象的なソリューションを構築できる。一方で、そのイノベーションを、エンタープライズ環境に求められるガバナンス、セキュリティ、信頼の要件を理解する経験豊かなビジネスリーダーシップと組み合わせられる例は少ない。創業者は現実の課題を見つけ、素早くソリューションを作り上げることができるが、オペレーショナルリスクやコンプライアンスの現実を理解する強いビジネスの相棒がいなければ、そのソリューションはスケールに苦しみがちである。
結局のところ重要なのは、AIの機能そのものではない。企業が求めるガバナンスの枠組みの中で、一貫して、安全に、意味のあるビジネス成果を生み出せるソリューションかどうかである。
市場の視点:誇大宣伝と希望
最新レポートのために話を聞いたベンチャーリーダーたちは、現在のAI投資サイクルが「集中」と「拡大」の双方によって特徴づけられていることを認めた。資本は少数の基盤モデル(foundation model)提供企業に大きく流れ込み、評価額の水準や市場の持続可能性に疑問が生じている。そうした懸念は理解できるものの、市場の全体像を捉え切れているわけではない。
Blume VenturesでB2B AI投資を共同で率いるSumangal Vinjamuriはこう語る。「モデルラボや推論(inference)企業、あるいはデータ提供企業への投資に対して強気の姿勢と資本の潤沢さがあることは、資本市場の信認を示している」
資本が大手の基盤モデル提供企業に集中する一方で、より広いAIエコシステム全体における投資活動は依然として堅調である。業界特化のソリューションを構築するAI活用アプリケーション企業には、引き続き資金が流入している。大企業から中小まで、会計や法務といった主要な業界(バーティカル)領域、さらにはCRMやERPといった業務機能(ホリゾンタル)領域を揺さぶっている。
IVPのパートナーであるShravan Narayenは前向きにこう指摘した。「依然として、これらの大規模で資本が潤沢な企業が『小さな市場』を狙うことに経済的な動機が働きにくい、広大な余白がある。そこにスタートアップの優位性がある」
見出しになる評価額が印象を形づくることはあるが、それが市場を完全に規定するわけではない。イノベーションはスタックの複数レイヤーで起きており、資本は引き続き差別化されたユースケースを追っている。
AIはどこにでもある
今後1年で、製造、医療、公共部門など、従来は変化の遅い産業でも変革が続くと予想している。これらの市場での導入は、測定可能な価値によって後押しされている。
このパターンは、クラウド導入で私たちが見続けてきた状況とも重なる。多くの厳しく規制された業界は当初、機密データをクラウドへ移すことに慎重であり、場合によってはその慎重さがいまも残っている。ガバナンスモデルが強化され、セキュリティコントロールがより標準化されるにつれ、組織はクラウド利用を、より重要度の高いワークロードへと広げている。
AIも同様の軌道にある。企業が適切なデータ基盤とガバナンス構造を整備するにつれ、価値提案は無視しがたくなる。実験として始まった取り組みは、成果が見え、リスクが管理されるとともに、スケールした展開へと移行していく。
Kearny Jacksonの共同創業者兼ゼネラルパートナーであるSunil Chhayaはこう語る。「歴史的にテクノロジー導入が遅れていた業界でさえ、いまや予算を振り向け、あらゆる中核業務でAIを積極的に導入している。かつてより保守的と見なされていた保険や物流といった業界でも、保険金請求処理、引受(underwriting)、リスクモデリングといった用途でAIを活用しており、意味のある利益率改善につながっている」
こうした進展は、進行中のより大きなシフトを浮き彫りにしている。2026年のAI導入は、新奇性によって動かされるのではない。明確に示せるビジネス価値によって動かされるのだ。
エージェント的AIの時代、そして来年に向けてビジネスリーダーが何を求めているのか、さらに洞察を得るには、レポート「AI Agents Mean Business」を参照してほしい。



