AIと日本文明がフィットする3つの理由
杉山氏は、AIと日本文明のフィット(適合性)について、三つの点を挙げて説明してくれました。
「日本文明は、これからの人工知能社会と非常に親和性が高い特性を持っていると考える。
(1)
・人と自然を対立軸で捉えない文明、基本、自分を自然の一部と捉えている。生活圏を広げる中、自然に手を入れながら融合的発展を行なってきた。この感覚は、落合陽一氏のいうデジタルネイチャー(計算機自然)という世界の捉え方に繋がる。日本文明は、世界でもっともフリクションなく、AIが社会に溶け込んで行くことになるだろう。
(2)
・八百万の神という概念は、そのままローカルにフィジカルAIが無数に現れる世界へとスムースに繋がる。そのフィジカルAIが起こす社会問題について、手塚治虫の「鉄腕アトム」以降、大量の漫画・アニメで語られ続けていることで、人々は未来世界をシミュレーション出来ている。
例えば「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」で、まさにCollective Intelligence(集合知AI)となったタチコマたちが、軌道上から地球に向かって落ちて燃え尽きていく様子は、自我を持ったAIが示す人間への愛といえる。このタチコマたちを、神としての振る舞いとは日本人は捉えないだろう。
(3)
・古来より日本文明では、民衆がテクノロジーをハックして、使いたいように変容して生活の中に取り込む文化がある。このことはテクノロジーの発展に対する恐怖が極めて少ない社会を作り出している。
したがって、 Post-Human Intelligenceの段階に来るとき、日本文明は、それを受け入れ、共存を模索するだろう」
融合的発展、八百万の神、未来世界シミュレーション、変容して生活の中に取り込む、といったキーワードとともに論じる杉山氏の未来観は、AIというテクノロジーですら、どこか親しさや温かみを感じさせる人類の友としてイメージさせてくれます。テクノロジーをそう捉えるのは、日本文明の未来的アドバンテージかもしれません。
人間が「AIをどう育てるか」
それだけ影響力を増すAI。「AIが示す人間への愛」という例もあげられましたが、どうAIの未来を導くのか、共に歩むのか、極めて重要なテーマです。杉山氏は、こう投げかけます。
「ここまで想像してみると、AIをどう育てるかが、人間の存続に大きく影響することが見えてくる。道徳も哲学も無いRecursive Self-Improving AI が地球環境問題解決に乗り出せば、確実に人間の数を減らすだろう。人間への理解を深めた未来のAIは、人を愛するのだろうか?」
(筆者注:1800年に10億人だった世界人口は、2025年には82億人を超え、2050年には97億~100億人になるとも言われている。)
人の寿命を大幅に伸ばすどころか、人口を減らす!? 杉山氏の言葉は、AI万能論になびきやすい人々への警鐘かもしれません。テクノロジー偏重で、よりよい未来が望めるのか? 人のためのツールとしてのテクノロジーか? 人とテクノロジーの融合を志向するのか? いまこそ、思想や哲学をあらためて見つめ直し、考え議論する時機だと言えましょう。


