裁判資料が、Lunateを通じた所有構造とその実力者を明かす
カリフォルニア州サンマテオ郡の上級裁判所に提起されたローリーの訴訟は、彼女の直接の雇用主だけでなく、インサイト創業者のジェフ・ホーリングや他のパートナーに関連する複数の企業も被告として名指ししていた。
その訴訟手続きの中で、インサイトのマネージングディレクター兼最高コンプライアンス責任者アンドリュー・プロドロモスは、インサイト傘下の複数のファンドや法人を訴訟対象から切り離そうとした。だがその過程で、ポートフォリオ企業の創業者や少なくとも1人の現職社員ですら知らなかった、同社の所有構造に関する機密情報が明るみに出た。
その1つとして、インサイト側の弁護士が裁判資料で示した法人に「Insight Falcon Partners」がある。2025年4月の米証券取引委員会(SEC)への提出書類によれば、この会社は同年1月にインサイトの75%の持ち分を取得した。Insight Falcon Partnersの実質的な所有者は、ホーリングと同社の他のパートナーに加え、「LLTCI SPV 5 LLC」というデラウェア州の法人だ。
プロドロモスが2月に裁判所へ提出した宣誓供述書によれば、そのデラウェア法人の所有者は、アブダビ政府と「本社をアブダビに置く上場企業」とされていた。
裁判資料では、LLTCI SPV 5 LLCの持ち分を保有するその上場企業の社名までは明かされていない。世界でも有数の匿名性が高い地域として知られるデラウェア州では、法人の所有者情報の開示が義務づけられていないためだ。ただ、同じ「LLTCI」という略称(Lunate Long-Term Capital Iの略とみられる)を使う別の特別目的会社(SPV)が、アブダビ拠点の投資会社Lunate(ルネイト)に関連するUAEの企業登記資料に登場している。事情を知る関係者らも、この投資がLunateのファンドを通じて行われたと認めた。Lunateは、インサイトの複数のファンドにも出資している。
運用資産18.3兆円超のLunateを、シェイク・タハヌーンに近い企業群が所有
1150億ドル(約18.3兆円)超の資産を運用するLunateは、湾岸地域でも屈指の実力者として知られるシェイク・タハヌーン・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーンに近い企業群によって所有されている。UAEの大統領シェイク・モハメド・ビン・ザイードの弟でもあるタハヌーンは、7800億ドル(約124兆円)規模のアブダビ政府系ファンドの会長を務めるほか、UAEの国家安全保障顧問も兼任している(Lunateには民間の機関投資家も出資している)。
2023年に設立されたLunateは、UAE最大の上場企業International Holdingを含む、シェイク・タハヌーンの影響下にある企業群の1社だ。2024年には、Lunateが、それまでタハヌーンが会長を務めるアブダビの国営AI企業G42が管理していた中国特化型AIファンド「42X」の運用を引き継いだ。同年42Xは、TikTokの親会社ByteDanceや、その他の中国スタートアップへの出資持ち分を売却した。これは、マイクロソフトがG42に15億ドル(約2385億円)を出資したことを受け、UAEが中国の技術ではなく米国製の半導体やハードウエアを使うことでまとまった合意の一環だった。
Lunateの公式サイトによれば、同社はVC、バイアウト、プライベートクレジットに投資しており、これまでに未上場のファンド運営会社の持ち分取得を通じて10件超の投資を実行してきた。だが、SECは25%未満の間接保有持ち分について開示を義務づけていないため、同社の米国での具体的な投資先が公になることはまれだ。Lunateはコメントを控えた。


