AIで激変する制作現場
クリエイティブ分野が今、AIの大きな影響を受けていることは言うまでもない。しかし制作現場でのAI利用には賛否両論があり、とりわけ短期的な利益を目的に作品をAIで丸ごと生成する動きには厳しい目が向けられている。AIスロップ(AIによる文章や画像などの低品質なコンテンツ)が大量生産される傾向は、多くのクリエイターにとって極めて切実な懸念事項だ。しかしAIの台頭は必ずしも悪い面ばかりではない。
The Atlantic(アトランティック)誌のインタビューで、YouTubeのCEOニール・モーハンは次のように話している。「AIに何を期待しているかクリエイターに尋ねると、多くは日々の制作業務の効率化だと答えます。例えばYouTubeの動画では、クリックしたくなるタイトルとサムネイルの作成が不可欠ですが、それはたくさんの話し合いや試行錯誤を必要とする、時間のかかる作業です。AIツールはこうしたプロセスを効率化してくれます。クリエイターが新しいテクノロジーを積極的にとり入れる傾向があることは以前から知られていますが、私はAIの画期的な活用法の多くは現場のクリエイターから生まれると思っています」
多くのクリエイターが今、クリエイティビティをあまり必要としない部分をAIで効率化したいと考えている。そしてトップクリエイターの多くは、制作の核となる部分では昔ながらのローテクな手法を大切にしている。
『Under the Orange Blossoms』の著者シンディ・ベネズラは、その好例だ。自身の体験やインスピレーションをもとに物語を紡ぐ彼女は、テクノロジーが完成した作品の共有に役立つ一方で、創作の初期段階では紙に書き出すといったローテクな手法の方が有効だと考えている。
ベネズラはこう記す。「心の奥底にある思いを紙に書き出すことには特別な意味があります。書くという行為は、話したり考えたりするときには得られない重みを実感させてくれます。時には思いが強過ぎて紙が破れてしまうこともあります。でもそれもまた、心の解放につながります。そして紙をゴミ箱に捨てると、気分がすっきりします!まるで心のゴミを捨ててしまうような感覚です」
AIを連携させて制作する時代
最近では個別のツールを超えた動きも生まれてきている──各ツールを統合するクリエイティブ・エコシステムの進化だ。たとえばCanvaは、プラットフォームにAIを深く組み込んで各種サービスを提供している。最近追加された「マジックレイヤー」機能では、生成された画像の要素を分解・編集できるため、一から生成し直すことなく、より細かい調整ができるようになった。一方、Kittlはテンプレート、タイポグラフィ(フォントなど)、生成AIを統合したプラットフォームを提供し、世界中で何百万人ものユーザーに利用されている。
また、ワークフロー全体における統合も進んでいる。今では画像・動画・音声・テキストを一つのインターフェースから生成できるプラットフォームも登場し、制作プロセス全体をシームレスに進められるようになった。これは制作現場における大きな変化と言える。なぜなら本来、作品作りは一つの手法で完結することは少なく、複数の表現手段を行き来しながら、他のクリエイターとのコラボレーションを通じて磨き上げられるものだからだ。
さらに注目すべきは、AIを前提にした新たなSNSや制作環境の登場だ。Metaは先頃、AI同士が自律的にやりとりをしながら共同制作を行うプラットフォームMoltbookを買収した。この動きはいずれ、クリエイターがAIツールを「使う」だけでなく、AI主導のクリエイティブ・エコシステムに「参加して制作する」未来を示している。


