自分を大きく見せようとするほど、人は消耗する。ドイツ・韓国でベストセラーとなった本書で、信頼・交渉・パワーゲームを専門とするマティアス・ネルケ氏が勝ち筋として示すのが「アンダーステイトメント」——意図的に自分を抑える戦術だ。そのお手本として著者が挙げるのが、イギリス紳士「ジェントルマン」である。『私を消耗しない賢明な態度』(サンマーク出版)から、一部抜粋・再構成してお届けする。
「過剰なもの」と距離を置く
アンダーステイトメントのお手本といえば、イギリス紳士、ジェントルマンだ。
ジェントルマンからイメージするのは、完璧なマナー、目立たないが趣味のよい上品な服装、リラックスした身のこなしといったところだろう。
全力で目標を追い求め、ナンバーワンになるのにすべてを捧げる人は、素晴らしい若者かもしれないが、ジェントルマンには値しない。
ジェントルマンは過剰なものにはなじみがない。度を越した野心にもまったく縁がない。
彼らの知識は深いというより幅が広い。
それは、決して表面的であるとか中身がないという意味ではなく、広い教養と広い視野を持ちあわせているという意味だ。
視野が狭いのは、ジェントルマンには似合わない。
まったく専門知識がなくても、彼らの名声が損なわれることはない。ジェントルマンは専門家ではない。
伝統的に、ジェントルマンは上流社会の出身だ。ふつうは貴族で、おおかたは下級貴族だった。
かつてはジェントルマンを1つの階級として定義する試みもあった──貴族と市民の間に位置する階級として。
しかし、この分類の仕方は広くは受け入れられなかった。
その代わりに、この言葉はだんだんと性格と態度に関連づけられて使われるようになっていった。
したがって、貴族のだれもがジェントルマンだったわけではないが、長い間、ジェントルマンと呼ばれる人たちはだれもが気高い人たちだった。
こうして、この呼び方は、人格の質を保証する商標のようなものになった。



