これは非常にもどかしい。どれほど明確に伝えても、相手は理解しているように見えるのに、後になって結局、同じ場所に戻ってしまうからだ。ジョーイが完璧なフランス語を繰り返していると思い込み、周囲には大外れだとわかっている状況に少し似ている。
これは職場で日常的に起きている。人は「聞いたと思ったこと」の自分版を持ち帰ってしまう。だが、なぜなのか。
なぜ人は同じフィードバックでも「違う受け取り方」をするのか
人は、自分についてすでに持っている物語を通してフィードバックを聞く。ある領域で自分は強いと思っている人にとって、フィードバックはその信念と即座に照合される。一致すれば受け入れやすい。一致しなければ、心はメッセージを調整し、「自分が思っている自分像」に合うようにする。だからこそ、人は聞いて、同意し、それでもあなたの意図とは違う内容を持ち帰りうる。
心理学にはこれを説明する研究が多い。人は自然に、すでに信じていることを支持する情報により注意を向け、反するものの重みを小さく見積もる。職場では、同じ言葉を聞いても、2人がそれぞれ「自分にとって真実味がある部分」に焦点を当てて持ち帰ることがある。ある人は「次はやり方を変えなければならない」と受け止める。別の人は同じ指摘を聞いても「それはあの状況だから起きただけだ」と考え、以前と同じやり方に戻る。
同じ会話の中でも、ある1つの細部だけがほかより強く印象に残り、その人の頭の中で主題になってしまうことがある。その一点が、その後の行動を決めてしまうこともあるが、それはあなたが言いたかった核心ではないかもしれない。仮に相手が意図を理解したとしても、だからといって何かが変わるとは限らない。「わかる」ことと「実行する」ことは別物なのだ。
なぜフィードバックが「小さな変化」にしかつながらないのか
その場では相手が同意しているのに、結局、何も変わらないのだとすれば、次回は何をどう変えればよいのかを相手が見いだせていない可能性が高い。すると同じ状況が再び起きたとき、相手はいつもどおりのやり方に戻ってしまう。
忙しいという現実もある。フィードバックはその瞬間には腑に落ちても、相手は次の用事へ移り、試してみないまま終わってしまう。本当の変化は、新しいやり方を試し、結果を見て、定着するまで続けることで初めて起きる。それが起きないと、後になって同じ会話を繰り返すことになる。


