欧州

2026.04.15 07:00

ウクライナの動員体制はいまどうなっているのか? 5年目に入った消耗戦を左右するマンパワー問題

訓練初日に整列するウクライナ軍第118独立機械化旅団の新隊員たち。2026年4月5日撮影(Dmytro Smolienko/Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

ウクライナのソーシャルメディアには、軍当局者が公の場で徴兵対象者とみられる人を無理やり拘束しているように見える動画もあふれている。こうした動画はオンラインで急速に拡散し、動員が強制的で、秩序だっておらず、不公正なものだという認識を強めている。

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クザンによると、2025年11月の数週間だけで、オンライン上で動員や採用センター、兵役に関する言及がおよそ16万4000回あり、大半が否定的なトーンだった。また、虐待や衝突、強制動員などがあったとする動画が、反動員的なコンテンツを一貫して発信しているチャンネルから積極的に拡散されているという。

そうした動画がすべて偽物だというわけではない。しかし、ボットやマニピュレーション(操作)、選択的な増幅によって形づくられる情報環境では、実際にあった出来事も、もとの文脈をはるかに超えて「武器化」され得る。その結果、状況をじわじわと悪化させていく負のループが生じる。単発的な虐待事例や、不公正と思われる出来事が怒りを引き起こし、その怒りがオンライン上で増幅され、最終的に動員全体の正当性が損なわれていくのだ。

クザンは、採用当局とオピニオンリーダー、軍の間のコミュニケーションがもっと迅速で建設的に行われるようになれば、こうした影響はいくらか和らげられるのではないかとの見方を示す。ただし、ウクライナがこの先、ロシアの情報戦に完全に対処できるほどのリソースを持つことはずっとないだろうとも予想した。

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前線に影響を及ぼしている現実の問題

この問題の緊急性は理論上の話などではない。戦線全体のなかでロシア軍が最も激しく進撃しているいくつかの方面の状況は、ウクライナ防衛軍の人員不足と密接に関係しているとクザンは指摘する。

彼によると、場所によっては、ウクライナ軍の陣地はごく少数の人員だけで守られている孤立した砦のようなものになっており、陣地間に大きな空白ができてしまっている。ウクライナ軍第47独立機械化旅団の元将校ミコラ・メリニクも「最大の問題は十分な歩兵がいないことです」と筆者に語った。

問題の規模は数字に表れている。ウクライナのミハイロ・フェドロウ国防相は今年1月、無許可離隊(AWOL)したウクライナ軍人は推定でおよそ20万人にのぼり、兵役逃れの疑いで捜索対象になっているウクライナ人もおよそ200万人いると語っている。

これが軍事的観点から見た動員問題の核心である。たんに書類上のマンパワーを増やすことが重要なのではない。むしろ、陣地を保持し、疲弊した兵員を戦闘から引き下げて交替させ、また、ある方面全体の防衛がほとんど休息を得られず酷使され続ける歩兵に依存した状態になるのを避けるため、戦力に十分な「厚み」を確保することこそ課題なのだ。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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