欧州

2026.04.15 07:00

ウクライナの動員体制はいまどうなっているのか? 5年目に入った消耗戦を左右するマンパワー問題

訓練初日に整列するウクライナ軍第118独立機械化旅団の新隊員たち。2026年4月5日撮影(Dmytro Smolienko/Ukrinform/NurPhoto via Getty Images)

戦争が長引くなか、こうした変化が起こるのはむしろ自然だ。2022年には、ウクライナは国家の存亡のかかった状況に直面したために、国民の間で自発的なエネルギーが一気に高まった。2025年になると、問題はもはやたんに軍務に就く用意があるかどうかではなく、どのような条件で軍務に就く用意があるかというものに変わった。クザンは、動員はいまでは愛国心だけでなく、指導部への信認、制度への信頼、そして軍務が公正で、目的があり、持続可能に思えるかに左右されるようになっていると説明する。

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ウクライナ国家親衛隊アゾフ旅団の参謀長を務めたボフダン・クロテビッチは2月、ソーシャルメディアへの投稿で、ウクライナの問題はたんに何人動員するかではなく、動員した人がどこに配属され、またどのように活用されるかだと論じている。長期にわたる戦争では、部隊が希少な戦略リソースとして配置、訓練、管理されるのでなく、前線の危機に対するその場しのぎの解決策として扱われると、信頼は崩壊する。

ウクライナ軍第128独立山岳強襲旅団の航空偵察部隊の指揮官であるバシル・シショラによれば、いまでは進軍してくるロシア軍への脅威よりも、徴兵制度への恐怖のほうがまさっているように見受けられる場合も往々にしてあるという。「徴集候補者たちはロシア軍が日ごとに近づいてくること以上に、軍の採用事務所(の職員)がフォルダーとペンを手にやってくることを恐れています」と彼は筆者に述べた。「ロシア側が前線で収めた戦果など誰も気にかけていません。率直に言って、こうした状況には恐怖を覚えます」

シショラの話には誇張もあるかもしれないが、ウクライナの戦時体制内で緊張が高まっているという現状を捉えているのは確かだ。何も、ウクライナ人がこの戦争の重大性を理解しなくなっているというわけではない。そうではなく、戦闘や犠牲、疲弊、いつ兵役が終わるのかわからないという不確実性が何年も続いてきた結果、軍務をめぐる「社会契約」を維持することが以前よりも難しくなっているのだ。

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問題を悪化させるロシアの偽情報

問題をさらに悪化させているのがロシアによる情報工作だ。安保・協力センターのクザンは、ロシアの偽情報は現在、ウクライナの動員に影響を与える決定的な要因のひとつになっていると指摘する。彼によれば、クレムリンの息のかかったキャンペーンは、地域の採用センターへの信頼を損ない、国民の士気をくじき、当局への不信を募らせ、敗北主義的な感情を広めることを目的としている。

ウクライナのオレクサンドラ・ウスチノバ最高会議(国会)議員は筆者の取材に応じ、こう語った。「ウクライナがマンパワー問題に直面しているのは確かですし、それはロシアのプロパガンダによって悪化しています。彼らは『戦争に行けば最初の任務で死ぬ』という恐怖を広めています」。ウスチノバによると、ウクライナ側は新たなデジタルツールなどで対応しようとしている。「この問題に対処するため、わたしたちは『レゼルウ・プリュス(リザーブ・プラス)』や『アルミヤ・プリュス(アーミー・プラス)』といった電子システムを導入しました。レゼルウ・プリュスは利用可能な人的リソースの把握に役立っていて、アルミヤ・プリュスは現役軍人の生活の利便性を向上しています」

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翻訳・編集=江戸伸禎

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