AI業界に新たな保安官が現れた。「HappyHorse」だ。いや、“新しい馬にまたがった保安官”と言うべきだろうか。
少し前まで、「HappyHorse」(ハッピーホース)は、ぬいぐるみを作るオランダ企業の名前として知られていた。ところが、この名を冠した新しい動画生成モデルがベンチマーク(性能評価)サイトに現れた。しかも、テキストからの動画生成部門と、画像から動画を生成する部門の2部門でトップを勝ち取り、人々の注目を集めた。
その後、アリババがこのモデルは自社のものだと「名乗り出て」、ジャック・マー(馬雲)が築いた帝国から生まれたモデルであると宣言した。
このような形で公開したのは、アリババが手続き上の煩雑さ(レッドテープ)を避けるためだという声もあった。また、ちょうど10年ほど前(あるいは20年近く前だろうか?)にサトシ・ナカモトのビットコインが世界を揺さぶったときのように、「一匹狼ならぬ一頭の馬」としての挑戦者という話題性を演出するためだという見方もあった。あるいは、HappyHorseという名前を特定の企業と結びつけないことで、モデルそのものの実力で評価してもらえるようにしたのだという指摘もあった。
この馬が好まれる理由
実力という点で、なぜ人々がHappyHorseをモデルとして好むのかを見ていこう。評価サイトによれば、ユーザーは1対1の比較で、このモデルが生成した結果を他モデルよりも好む傾向にある。HappyHorseは「Elo(イロ)」値が高いのだ。
では、Eloとは何か。
これは「イロ」と発音し、チェスの世界に由来する指標である。プレーヤーの順位付けシステムを考案したハンガリー出身の人物にちなんで名付けられた。1960年代に全米チェス連盟(United States Chess Federation)で採用されて以来、広く知られた指標となり、今ではAIの評価にも用いられている。
Eloシステムを用いた動画生成の評価では、モデル名を伏せた2本のクリップをユーザーが比較し、どちらが優れているかを選ぶ。勝ったモデルはポイントを獲得し、負けた方は失う仕組みだ。
そしてHappyHorseは、次々に勝ち星を挙げている。
こうした評価サイトで公表されている結果を見ると、ユーザーがHappyHorseの動画について指摘している具体的な強みは、以下のような点である。
・映画のような照明表現とカラーグレーディング(色調整)
・より自然な動き(「AIっぽい硬さ」が少ない)
・ショットをまたいだ一貫性の高さ(同じキャラクター、同じ場面を維持しやすい)
・写真のようにリアルな質感と顔の表現
・全体として高いリアリティ
・滑らかな動き
2026年が進む中で注目を集めている動画生成モデルとしては、気に入られる要素が数多くある。



