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2026.04.16 15:15

「調和」について考えさせられた、あるコンサートの衝撃

2026年3月15日にイタリア・ミラノで開催した参加型アートプロジェクト『Earth ∞ Pieces MILANO 2026(アース・ピースィーズ ミラノ2026)』

2026年3月15日にイタリア・ミラノで開催した参加型アートプロジェクト『Earth ∞ Pieces MILANO 2026(アース・ピースィーズ ミラノ2026)』

「調和」という言葉があります。理想的な状態や状況を示すに使われます。パリにある特定の様式に沿った左右対称の建築物を指すこともあるし、東京の下町にあるやや雑然とした街並みや生活風景を(外国人が)表現する際に使われることもある。論理と感情の両方のバランスがとれている、という意味合いがありそうです。

ただ、どちらかといえば、多用されるのは前者のケースでしょう。即ち、数値的な釣り合いがとれている。さらに日本の文化では、この調和の前提に「きちっと」という言葉があります。

「きちっと」というのは、日本の文化や行動規範を表す鍵となっています。これが伝統技術の職人の仕事から東海道新幹線の緻密運行ダイヤに至るまで、あらゆるところに埋め込まれています。

ですが、不必要なところまで地雷のようにあるので要注意です。時には除去した方が世界はよく見えます。例えば、素人の合唱団やオーケストラの演奏を聴いて楽しむのに「きちっと」への過大な要求は余計なことです。

導入に字数をやや費やしましたが、ここで言いたいのは、往々にしてぼく自身も遭遇する自身の内にある「きちっと」への拘りの超克です。

先日、「きちっと」を適宜選択するステップにいけないと、新しいラグジュリーとして求めるべきハーモニアスな状態に到達できないと強く思うに至りました。イタリアに長く生活してきて、そのあたりの緩め方を心得ていると思うことも常々ありますが、そうではなかったと3月15日、ミラノ市内のダル・ヴェルメ劇場の演奏会で痛感したのでした。

身体、精神、社会などさまざまな面でギャップを負っている人たちが中心となり、音楽を通じて生きることに確信をもとうとしている団体、アレグロモデラートの15周年記念が演奏会の前半です。

そして、後半はSlow Labelという横浜にあるNPO法人が主宰している「Earth ∞ Pieces(アース・ピースィーズ)」というプロジェクトの演奏です。ベートーヴェン《喜びの歌》を題材に、合奏練習わずか1日で共演するのです。

当日、日本から来たメンバー、アレグロモデラートのメンバー、イタリアの公募メンバーが《喜びの歌》を演奏し歌いました。2026冬季パラリンピック公式の最終日でもあり、その文化プログラムという位置づけです。

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文=安西洋之(前半)・前澤知美(後半)

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